『質問』
所有権移転外リース資産に係る圧縮記帳
≪内容≫
関与先のA社においてTVのCMで話題となっている環境対応車、いわゆるエコカーをリース会社か ら法人税法上の所有権移転外リース契約により購入し、国から補助金が支給されることになりした。 通常、リース資産に対しては、圧縮記帳は適用除外と聞いていますが、この所有権移転外リース契約 については、国庫補助金の圧縮記帳の対象になりますか。 『答』
現に国庫補助金等をもって取得したリース資産があり、その取得対象資産から所有権移転外リース資産は 適用除外にする旨の規定がない以上、所有権移転外リース資産も適用対象になるといわざるを得ません。 ご質問のエコカーの圧縮記帳の適用は、リース資産を取得した時に圧縮記帳を行うことになります。

(解説)
1 法人税法上の圧縮記帳と所有権移転外リース取引の適用関係をみてみますと、次に掲げる圧縮記帳 については、代替資産や買換資産などの「取得」の範囲から所有権移転外リース取引による取得は除外 されています。すなわち、所有権移転外リース取引により取得した資産は、代替資産や買換資産などの 適用対象資産にすることはできません。
① 法人税法上の圧縮記帳
・ 保険金等で取得した固定資産等の圧縮記帳(法法47①、法令84の2)
② 租税特別措置法上の圧縮記帳
イ 農用地等を取得した場合の圧縮記帳(措法61の3①)
ロ 収用等に伴い代替資産を取得した場合の圧縮記帳(措法64①)
ハ 特定の資産の買換えの場合の圧縮記帳(措法65の7①⑮二)
日税メルマガ通信 特別号
~税務のチェックポイント Q&A75 ~ 号
平成 29 年 10 月 4 日発行
編集:日税メルマガ事務局
㈱日税ビジネスサービス 業務本部
東京都新宿区西新宿 1-6-1 新宿エルタワー29階

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ニ 平成21年及び平成22年に土地等の先行取得をした場合の圧縮記帳(措法66の2①⑭一)
ホ 転廃業助成金等で取得した固定資産の圧縮記帳(措法67の4②)

2 ところが、国庫補助金等で取得した固定資産の圧縮記帳にあっては、所有権移転外リース資産は適 用除外にする旨の規定はありません。この趣旨は明確ではありませんが、そもそも国庫補助金等をもっ てリース資産を取得するようなことは予定されていなかったものとも考えられます。このほか、たとえ ば、工事負担金で取得した固定資産等の圧縮記帳(法法45)や非出資組合が賦課金で取得した固定資 産等の圧縮記帳(法法46)、技術研究組合が試験研究用資産を取得した場合の圧縮記帳(措法66の10) にあっても、所有権移転外リース資産は適用除外にする旨の規定はありません。
しかし、現に国庫補助金等をもって取得したリース資産があり、その取得対象資産から所有権移転外 リース資産は適用除外にする旨の規定がない以上、所有権移転外リース資産も適用対象になるといわざ るを得ません。ご質問のエコカーについては、国庫補助金等で取得した固定資産の圧縮記帳の適用対象 にしてよいものと考えます。
3 次に、国庫補助金等で取得した固定資産の圧縮記帳は、国庫補助金等の返還を要しないことが確定 している場合に行います(法法42①)。その返還を要しないことが確定していない場合には、交付を受 けた国庫補助金等は特別勘定に経理しておき(法法43①)、その後返還を要しないことが確定したとき に圧縮記帳を行うこと(法法44①)になるからです。


〈著者プロフィール〉 山下 德夫 氏 税理士、長崎県出身、旧大蔵省在職時には、法人税法関係の法律の企画立案事務に従事し、 税務大学校教授在職中に公益法人課税・減価償却関係等に関する論文発表。






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