消費税については、販売のあった年に販売価額で(課税)売上として計上します。 所得税法上、収穫基準を適用する場合であっても、消費税法上は収穫基準とは関係ありません。

そもそも農業所得は何でしょうか。

  1. 米、麦その他の穀物、馬鈴しょ、甘しょ、たばこ、野菜、花、種苗その他のほ場作物、果樹、樹園の生産物又は温室その他特殊施設を用いて行う園芸作物の栽培を行うもの
  2. 繭又は蚕種の生産を行うもの
  3. 主として①又は②に該当する物の栽培若しくは生産する者が兼営するわら工品その他これに類する物の生産、家畜、家きん、毛皮獣若しくは蜂の育成、飼育、採卵もしくはみつの採取又は酪農品の生産を行うもの

※業種分類上、上記①及び②に該当する事業を営む者が兼営する牛、馬育成業、養鶏業、酪農業、養蜂業、養豚業については、「畜産農業」として「農業所得」に分類し、それ以外の者が営むものは、「畜産業」として「その他の事業所得」に分類されます。
 
収穫基準とは、農産物などの収穫が完了し、販売できる状態になった時に収益計上する基準です。
農作物とは次をものをいいます。

  1. 米、麦その他の穀物、馬鈴しょ、甘しょ、たばこ、野菜、花、種苗その他のほ場作物
  2. 果樹、樹園の生産物
  3. 温室・ビニールハウス等の特殊施設を用いて行う園芸作物の栽培を行うもの

農業所得の中でも「農作物」について収穫基準が適用されます。

収穫基準における収入金額は「収穫価額」を用います。「収穫価額」は収穫時における生産者販売価額であり、農産物の裸値(市場等への出荷価格から包装費等の出荷経費を控除した価額)により計算します。

なお、農産物以外については、原則通り、販売時に収入とします。

 農業所得の計算は

農業所得は事業所得の一種類であり、「総収入金額-必要経費=農業所得」として計算します。
収穫基準を適用する場合、以下の2通りの記帳方法があります。

原則法

収穫価額を収入金額に計上すると同時に、同額を仕入金額として計上します。

数値例でみてみましょう。

例:収穫価額(収穫高)1,000万円、期首在庫200万円、期末在庫100万円、販売収入(販売高)1,200万円
①収入金額 :収穫価額1,000万円+販売収入1,200万円=2,200万円
②原価   :期首在庫200万円+収穫価額1,000万円−期末在庫100万円=1,100万円
③収入金額計:①−②=1,100万円
 

簡便法

簡便法として、以下の計算もできます。

簡便法と表現しましたが、農業所得用の青色申告決算書、収支内訳書の様式はこちらで計算できるようになっていますので、事実上のスタンダードかと思います。
数値は上記例と同じです。

①収入金額:販売収入1,200万円−期首在庫200万円+期末在庫100万円=1,100万円
②原価  :計算なし
③収入金額計:①−②=1,100万円

収穫基準を適用しなくてもよいもの

収穫基準の対象となる農産物は、ざっくり言うと消費期限が長いものとなります。

ですので、青色申告者については、米麦等以外の「野菜等の生鮮な農作物」「その他の農作物」の収穫時の記帳は行わず、販売時の数量・単価・金額を記帳するのみで構わないという特例があります。

なお、この「生鮮な農作物」は収穫時から消費までの期間が比較的短いものに限定されますので、果実のうち、みかん・りんご・栗やいも類などは対象外とされています。 

工事完成基準と工事進行基準

建設業では、売上と経費を計上するタイミングが2つあります。一つは、工事完成基準というもので、文字通り工事が完全に完成(引き渡す、検収を受ける)した時点で売上を始めて認識して計上します。仕入・外注等の原価も同様に完成するまでは経費処理しません。

分かりやすく言えば、工事が終わるまでは売上・経費の処理はしませんということになります。工事が終わるまでに中間金をもらったときは「未成工事受入金(前受金)とし、終わるまでに途中で下請業者に外注費を払った場合でも「未成工事支出金(前渡金)」とします。

 

その事業年度ですべての工事が完成していて、翌年度に繰り越す案件がない場合は、さほど気にすることはありません。規模の小さい建設業においては普段の経理を簡便化するため、期中は払ったら経費処理したうえで、決算のときのみ完成していない工事の原価を未成工事支出金に振り替えるという処理でも実務上は問題ありません。

 

工事完成基準が通常。進行基準を選択する会社は限られる。

 

これに対して工事進行基準は、工事の進行割合に応じて売上も原価も「見込み計上」していきます。工事が完成してなくとも、工事進行割合を計算して売上・原価ともに計上していくことになります。

 

工事進行割合 = (既に要した原材料費、労務費。経費の合計)÷見積もった工事原価

 

つまり、工事進行基準を使うには、工事原価を事前に見積もる作業と、その後実際にかかった原価の集計が求められます。非常に煩雑です。

そのため、多くの中小企業では下記すべてに該当しない限りは、工事完成基準を選択することが圧倒的です。下記に該当する場合は、法人税においては、強制的に工事進行基準が適用されます。

 

要件①:工事着手の日から工事完成(引渡し)日までに1年以上かかること
要件②:請負額が10億円以上
要件③:請負額の50%以上が、その工事の引き渡しの期日から1年を経過する日後に支払われることが定められていないもの

 

なお、上記①②③に該当しない工事でも、2事業年度以上にわたって行われる工事については、工事進行基準を選択することはできます。とはいえ、工事進行基準は見込みで利益を計上していくということなので、納税面では税負担が早くなります。節税面を考えても工事完成基準が望ましいといえます。

 

いずれにしても決算日時点で未完了の工事がある場合は、建設業の決算は少し手間を要するものです。個別の工事ごとの原価管理は必要となりますし、決算や税務申告で求められるから仕方なくやるというよりも、個別の工事の納期・採算を管理するという視点で取り組んでいただければと思います。

 

やはり、個別の工事の納期・採算をキチンとしている建設会社ほど儲かるし、資金繰りも改善されるというのが本音のところです。アバウトな経営は建設業では特に厳しいと感じています。