2.電子帳簿保存法の対象事業者
電子帳簿保存法の施行対象は、原則「すべての法人と個人事業主」となっています。ただし、紙媒体の保存方法を採用しており、電子データがない法人や個人事業主は、施行対象外です。電磁的記録の電子保存義務化については、下記2024年度以降も紙に出力して保存が可能にを参照 詳しくはこちら電子帳簿保存法をわかりやすく解説をクリック
電子保存義務化の猶予が恒久に?令和5年度税制改正大綱を解説 | TOKIUM(トキウム) | 経費精算・請求書受領クラウド電子保存義務化の猶予が恒久化?
2022年11月時点におけるNHKの報道では「取り引き書類 電子保存義務化 与党税調 猶予延長議論の見通し」という見出しがありましたが、税制改正大綱の内容を見ると、実質的には延期ではなく恒久化したという見方が適切であると思われます。
電子保存義務化の「宥恕措置」とは
ここでの「宥恕措置」とは、電磁的記録の電子保存義務化に2年間の猶予期間を設ける経過措置のことを指します。
そもそも電磁的記録の電子保存義務化(電子データの出力書面等による保存措置の廃止)は、2022年1月の改正電子帳簿保存法に盛り込まれた内容でした。しかし、改正法の施行までの準備期間が短く、直前になっても多くの企業が対応できていないというのが実情でした。この状況を踏まえ、改正法が施行される直前の21年12月に、令和4年度税制改正大綱にて「宥恕措置」が設けられる運びになりました。
具体的な措置の内容としては、「やむを得ない事情がある場合」「ダウンロードの求め・出力書面の提示又は提出に応じられる場合」の2つを条件に、2024年までの2年間は電磁的記録を紙に出力して保存することが認められる、というものです。この措置には、2024年以降は当初の通り電子保存が義務化されることも併せて明記されていました。
2024年以降も紙に出力して保存が可能に
2024年までのはずだった「宥恕措置」ですが、令和5年度税制大綱改正によって、「宥恕措置」の内容が電子帳簿保存法の本則に盛り込まれることになります。
電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについて相当の理由がある保存義務者に対する猶予措置として、申告所得税及び法人税に係る保存義務者が行う電子取引につき、納税地等の所轄税務署長が当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについて相当の理由があると認め、かつ、当該保存義務者が質問検査権に基づく当該電磁的記録のダウンロードの求め及び当該電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとする。
引用:財務省|令和5年度 税制改正の大綱それに併せて、「宥恕措置」は2023(令和5)年12月31日をもって廃止となります。
電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存への円滑な移行のための宥恕措置は、適用期限の到来をもって廃止する。
引用:財務省|令和5年度 税制改正の大綱したがって、2024年以降においても、電磁的記録を紙に出力して保存することが認められるようになります。
まとめ:依然として電子保存への対応は検討すべき
ここまで、令和5年度税制改正大綱の電子帳簿保存法に関する内容を説明してきました。
「優良な電子帳簿」の範囲の変更、「スキャナ保存制度」の要件緩和、「電子取引」の保存用件の見直しという3つのポイントがありましたが、やはり3つ目の「電子取引」、中でも「宥恕措置の制度化」は大きな変化です。2024年以降も紙保存ができることが決まり、安堵している経理担当者も多いと思います。
一方で、今回の税制改正大綱は「電子保存に対応しなくて良い」ということを示唆している訳では決してありません。社会全体でアナログから電子へ移行する動きは急速に進んでおり、これからも進み続けるのは明らかです。「スキャナ保存制度」の要件緩和を一つ取っても、国が取引書類の電子化を積極的に進めたがっていることは、容易に推察することができます。来年以降、社会環境の変化に応じて再度改正されることも十分予想されますので、依然として電子保存への対応は必要でしょう。
また、業務を効率化する上でも書類の電子保存には大きなメリットがあります。法対応を目的とするのではなく、「業務効率化」という視点を持って電子保存への対応方法を検討しましょう。
過少申告加算税5%減額がメリット○
すべての帳簿を保存しないと適用なし?
重加算税☓ 無申告加算税☓