残余財産の分配を株主に行った際の税金・会計処理

解散・清算した会社から、株主に対して残余財産の分配を行った場合、その会社にはどのような課税関係が生じるのでしょうか。

残余財産の分配を行った会社の税金や会計処理について、解説していきます。

残余財産の分配を行った会社自体には課税はない

まず大前提として確認しておきたいのは、残余財産の分配を行ったことでその会社に課税関係は生じないということです。

残余財産の分配を行ってもその会社に利益はないことから、考えてみれば当然のことです。

ただ、会社が残余財産を分配する際に、株主に課税関係が生じる場合があり、会社としても注意しなければならないことがあります。

みなし配当が発生するかどうかを確認する

株主は、会社を設立する際、あるいは会社が増資した際に、会社に対して出資をしています。

そのため、残余財産の分配で株主に支払われる金銭の中には、その出資した金額に相当する部分と、それを超える部分があります。

出資した金額に相当する金額は、会社に対する出資金額の払い戻しであり、課税対象とはなりません。

一方、出資した金額を超えて支払われる金額は、株主に対する配当とみなされ、課税対象となります

そのため、残余財産の分配を行う際に、株主に対して分配される金額からみなし配当が発生するかどうかを計算する必要があります。

みなし配当が発生するかどうかを確認するためには、残余財産の分配額と出資金額に相当する金額(資本金等の額)を比較します。

そして、残余財産分配額の方が資本金等の額より大きい場合には、その差額がみなし配当となるのです。

一方で、残余財産分配額より資本金等の額の方が大きい場合には、みなし配当は生じないこととされます。

みなし配当がある場合は源泉徴収を行う

みなし配当が発生する場合、税務上は会社から株主に対して配当が行われたのと同じと考えられます。

そのため、通常の配当を支払う場合と同じように、支払配当金から所得税を源泉徴収しなければなりません

非上場会社の場合、みなし配当の額×20.42%が源泉所得税の税率となります。

残余財産の分配(みなし配当あり)の計算例

たとえば、残余財産が5,000万円、資本金等の額が1,000万円の場合、残余財産の分配による支払は以下のようになります。

  • (1)みなし配当の額
    5,000万円-1,000万円=4,000万円
  • (2)源泉所得税の額
    4,000万円×20.42%=816.8万円
  • (3)株主に交付される金額
    5,000万円-816.8万円=4,183.2万円
  • (4)税務署に納付する源泉所得税
    816.8万円