不動産貸付業をされている土地所有者の方にとって、その貸付が事業的規模であるか否かは、
税法の取り扱い上重要な問題となります。所得税では、青色申告特別控除(10万円又は45万円)や専従者給与などに関係することとなりますし、事業税では、これが課税されるかどうか、さらに相続税では小規模宅地の評価減特例に影響します。 T.税法ごとに異なる事業的規模 1.所得税 アパート・マンション・駐車場など不動産の貸付を行っている場合、所得税にお ける事業的規模については、次の基準により判定されることとなります。 (1)社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付を行っているかどうか。 2.事業税 地方税である事業税における、不動産貸付業についての事業的規模の判定は、所得税の取扱いを参考としています。この場合における事業的規模とは次のような基準によります。 以上の判定基準に基づき、事業的規模と認定された不動産賃貸業については、事業税の課税対象とされることになります。 3.相続税 相続税では、小規模宅地等の減額特例を適用する場合には、この事業的規模が関係することになります。しかし、現行の規定上は、事業的規模で行われていない場合であっても、相当の対価を得て継続的に行われているものについては、小規模宅地等の減額の特例の対象となります。従って、所得税における5棟10室のような 特別な規定はありません。
(注)事業的規模の判定基準は、各税法ごとに異なる点をご注意下さい。
U.所得税に与える事業的規模の影響 所得税においては、事業的規模であるか否かは、青色申告特別控除の金額及び事業専従者給与の取扱い上重要となります。 1.青色申告特例控除 現行の所得税における青色申告特別控除については、10万円の控除と65万円の控除の2種類があります。10万円の控除に関しては、青色申告の届出を提出すれば事業的規模・非事業的規模に係らず適用を受けることができます。 2.事業専従者給与 事業専従者給与につきましては、青色申告者の場合適正額、白色申告者の場合、
配偶者は86万円その他の親族は50万円まで認められています。青色申告・白色申告ともに、事業的規模でなければ生計を一にする親族に対しての給与(事業専従者給)は認められません。 3.事業的規模かどうかの判断基準 現行の制度上は、5棟10室規定に該当すれば事業的規模としての取扱いになりま す。つまり、アパートで10室以上の賃貸や駐車場50台以上の賃貸であれば、必然的に事業的規模と判断されることになります。又、仮に形式的な個数基準に該当しない場合でも、その賃貸料収入の金額も考慮することで、事業的な規模と判断され ることもあります。
上記の例では、賃貸物件から生じる利益はA氏・B氏とも500万円と同額になります。これに対し、A氏は事業的規模であるがB氏は事業的規模ではないことから、
A氏はB氏に比較してさらに125万円余分に経費を計上できることになります。 ※無断複写・複製は禁止されています。 |
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