昨今、何かと世間を騒がせている消費税。政府が平成24年2月に発表した「社会保障・税一体改革大綱について」によれば、平成26年4月から消費税等の税率を8%、平成27年10月からは10%へと段階的に改正することとなっています。

消費税率の改正は、会社の経営だけでなく、私たちの日常生活にも大きな影響があるはずです。税率の改正がその後の日本経済に与える影響について非常に懸念されるところです。

さて、平成23年6月に消費税法の一部が改正されましたが、その中で消費税の免税点制度についての改正がありましたので、今回はその改正内容をご紹介致します。

消費税は当期の課税売上高が1,000万円を超えた場合には、翌々事業年度の消費税の納税義務が生じる仕組みになっています。

例えば、【図1】のとおり、平成23年の課税売上高が900万円であった場合には、翌々事業年度の平成25年は免税事業者となります。たとえ平成25年の課税売上高が1,000万円を超えていたとしても消費税の納税義務はありません。

また、平成26年については課税売上高が850万円ですが、2年前(平成24年)の課税売上高が2,500万円ですので、たとえ平成26年の課税売上高が1,000万円以下であったとしても消費税の納税義務が生じることになります。

このように、消費税の納税義務はその年の課税売上高で判定するのではなく、2年前(「基準期間」といいます)の課税売上により判定されることになるのですが、今回の消費税法の改正では、従来の2年前の課税売上高による判定要件に加え、新たに「特定期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合には、翌年から課税事業者となる」という要件が追加されました。なお、ここでいう「特定期間」とは、その事業年度開始の日以後6ヶ月の期間をいいます。

例えば、【図2】のとおり、平成24年の特定期間の課税売上高が1,300万円である場合は、1,000万円を超えることになりますので、平成25年は課税事業者として消費税の納税義務が生じることになります。つまり、改正前と比べると1年早く消費税の負担が生じることになります。平成26年については平成24年の課税売上高が1,000万円を超えているので、従来どおり課税事業者となります。

なお、特定期間により納税義務の判定を行う場合、課税売上高に代えて「給与等支払額の合計額」で1,000万円超を判定することもできます。特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていても、給与等支払額が1,000万円を超えていなければ給与等支払額による判定で免税事業者とすることができます。

上記の事例では平成24年の特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていますが、もし給与等支払額の合計額が1,000万円を超えていなければ平成25年は従来どおり免税事業者となります。

この「給与等支払額」とは、役員報酬や給与、賞与、残業手当など、所得税の課税対象となる給与や賞与をいいます。

従って、特定期間の課税売上高と給与等支払額の合計額がそれぞれ1,000万円を超えることとなった場合にはじめてこの要件に該当することになります。単純に特定期間の課税売上高のみで判定してしまわないようにご注意ください。なお、該当することとなった場合には特定期間終了後速やかに「消費税課税事業者届出書(特定期間用)」を管轄の税務署に提出しなければなりません。

この改正は平成25年1月1日以後に開始する年又は事業年度から適用されますが、特定期間の判定は平成24年1月1日から始まっています。個人事業主や12月決算法人の場合は、早ければ今年の6月には平成25年の消費税の納税義務が判定されることになります。

ところで、新設法人については、基準期間の課税売上高が存在しないことから設立当初2年間は消費税の納税義務が免除されています。しかし、資本金が1,000万円以上の新設法人についてはこれに係わらず設立当初より課税事業者とすることになっています。新設法人の資本金を1,000万円未満とするケースが多いのは消費税の負担を考え、この措置が大きく影響しているものと思われます。

さて、「社会保障・税一体改革大綱について」では、この新設法人に関する免税点制度について、「5億円超の課税売上高を有する事業者が直接又は間接に支配する法人を設立した場合については、当該設立された法人の設立当初2年間については、課税事業者とするなど現行の資本金1,000万円以上の新設法人に対する措置と同様の措置を講じる。」として、5億円超の課税売上高に支配されている新設法人について、資本金が1,000万円未満であっても課税事業者とすることを検討しています。

今回の免税点制度の改正と合わせ、将来予定されている消費税率の改正や新設法人に対する措置など、今後消費税が経営に与える影響はより大きくなっていくものと思います。

消費税は翌事業年度が始まる前に課税事業者か免税事業者かを認識しておくこと、そして、課税事業者の場合には原則課税と簡易課税のどちらが有利なのかも検討しておくことが重要です。

法人税は赤字決算によくあるように課税所得が無ければ税負担はありませんが、消費税は赤字決算であっても納税となるケースが多くあります。特に赤字決算の場合は利益が出ていない分、資金繰りも厳しい状況であることが多く、ここに消費税の納税が重なると非常に大きな負担となるでしょう。

冒頭でもお話しましたように、2年後には消費税率の改正が予定されております。消費税はあくまで預り金であるという意識のもと、資金繰りが厳しい中でも納税資金を確保できるような仕組みを構築しておくことが大切です。







            



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