9 役員給与等

【新設】 (法人である役員)

9−2−2  法第2条第15号《定義》に規定する役員には、会計参与である監査法人又は税理士法人及び持分会社の社員である法人が含まれることに留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  会社法においては、新たな会社の機関として、会計参与が設けられ、取締役と共同して、計算書類及びその附属明細書等を作成することとされている(会社法3741)。会計参与は、公認会計士、税理士のほか、監査法人又は税理士法人でなければならないとされている(会社法3331)。
 平成18年度税制改正において、法人税法上の役員の範囲に会計参与が追加されたことから(法2十五)、会社が監査法人又は税理士法人を会計参与とした場合には、これらの法人は当該会社の役員に該当することとなる。
 また、旧商法においては、会社は合名会社や合資会社の無限責任社員となることができないとされていたこと(旧商法55)、合名会社や合資会社の業務執行は無限責任社員が行うこととされていたこと(旧商法70、151)等から、法人が法人税法上の役員になることはなかった。会社法では、法人も持分会社の無限責任社員となることができることとされ(会社法第576条第1項第4号《定款の記載又は記録事項》に社員の「名称」を加え、かつ、法人が社員となることについて禁止規定が設けられていない。)、かつ、業務執行社員になることもできることとしている(会社法598)ことから、法人が持分会社の業務を執行する社員となった場合には、法人税法上の役員となることとなる。
 このように、旧商法の下においては、会社の業務を執行する役員は自然人に限られてきたため法人税法上も役員は自然人のみで法人がこれに含まれることはなかったが、現行の法人税法の下においては、会計参与である監査法人又は税理士法人及び持分会社の業務を執行する社員である法人は、法人税法第2条第15号に規定する役員に含まれることとなる。
 本通達は、このことを留意的に明らかにしている。
 なお、法人税法上、役員に関する規定はさまざまなものがあるが、特に規定上で個人に限定していなければ、その役員の範囲には法人であるものも含まれることとなる。

2  連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−2−2)を定めている。

≪参考≫
○ 会社法(抄)
(会計参与の資格等)

第三百三十三条 会計参与は、公認会計士若しくは監査法人又は税理士若しくは税理士法人でなければならない。

2、3 省略

(会計参与の権限)

第三百七十四条 会計参与は、取締役と共同して、計算書類(第四百三十五条第二項に規定する計算書類をいう。以下この章において同じ。)及びその附属明細書、臨時計算書類(第四百四十一条第一項に規定する臨時計算書類をいう。以下この章において同じ。)並びに連結計算書類(第四百四十四条第一項に規定する連結計算書類をいう。第三百九十六条第一項において同じ。)を作成する。この場合において、会計参与は、法務省令で定めるところにより、会計参与報告を作成しなければならない。

2〜6 省略

(定款の記載又は記録事項)

第五百七十六条 持分会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一〜三 省略
四 社員の氏名又は名称及び住所
五、六 省略

2〜4 省略

【改正】 (使用人兼務役員とされない同族会社の役員)

9−2−7 令第71条第1項第5号《使用人兼務役員とされない同族会社の役員》同族会社の役員には、次に掲げる役員が含まれることに留意する。

(1) 自らは当該会社の株式又は出資を有しないが、その役員と法第2条第10号《同族会社の定義》に規定する特殊の関係のある個人又は法人(以下9−2−7において「同族関係者」という。)が当該会社の株式又は出資を有している場合における当該役員

(2) 自らは当該会社の令第4条第3項第2号イからニまで《同族関係者の範囲》に掲げる議決権を有しないが、その役員の同族関係者が当該会社の当該議決権を有している場合における当該役員

(3) 自らは当該会社の社員又は業務を執行する社員ではないが、その役員の同族関係者が当該会社の社員又は業務を執行する社員である場合における当該役員

(注) 令第71条第1項第5号に規定する株主グループの所有割合の計算については、1−3−1《株式会社における同族会社の判定》から1−3−8《同一の内容の議決権を行使することに同意している者がある場合の同族会社の判定》までの取扱いを準用する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  同族会社の役員で、当該役員の属する株主グループの持株割合及び順位並びに当該役員とその配偶者の持株割合が一定以上である場合に該当する役員については、当該役員が代表取締役、専務取締役、常務取締役、清算人といった地位にない者であっても、使用人兼務役員とされないこととされていた(旧法令711四)。
 本通達は、この場合の使用人兼務役員に該当するかどうかの判定の対象となる同族会社の役員について、たとえその役員自身が当該会社の株式を全く有していないときであっても、その役員の同族関係者が当該会社の株式を有しているときには、その役員に係る株主グループとしては株式を有していることとなることから、平成18年改正前の法人税法施行令第71条第1項第4号イからハまでに掲げる要件を満たす場合には、その役員は使用人兼務役員とされないこととなる旨を明らかにしていたものである(旧基通9−2−4)。

2  平成18年度税制改正において、その法人が同族会社に当たるかどうかの判定の基準に、それまでの持株割合による判定に加えて、議決権割合による判定及び社員数割合による判定が設けられた。この改正に伴い、上記の使用人兼務役員に該当するかどうかについても、持株割合による判定から所有割合による判定に改められ、その役員の属する株主グループの所有割合及び順位並びに当該役員とその配偶者の所有割合が一定以上である場合には、使用人兼務役員とされない役員に該当することとされた(法令711五)。
 この場合の「所有割合」とは次に掲げる区分に応じそれぞれ次の割合をいうこととされている(法令713)。

1 その会社がその株主等の有する株式又は出資の数又は金額による判定により同族会社に該当する場合……その株主グループの有する株式の数又は出資の金額の合計額がその会社の発行済株式又は出資(その会社が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額のうちに占める割合

2 その会社が議決権による判定により同族会社に該当することとなる場合……その株主グループの有する議決権の数がその会社の議決権の総数(当該議決権を行使することができない株主等が有する当該議決権の数を除く。)のうちに占める割合

3 その会社が社員又は業務を執行する社員の数による判定により同族会社に該当する場合……その株主グループに属する社員又は業務を執行する社員の数がその会社の社員又は業務を執行する社員の総数に占める割合

3  本通達においては、上記のような税制改正を受けて、2又は3によりその所有割合を算定する法人についての取扱いを従来と同様に明らかにしている(上記1については従前の規定と同じであることから改正後の本通達でも同じ通達が存置されている。)。
 すなわち、本通達の(2)では、所有割合を2の議決権割合とする法人にあっては、たとえ当該役員自身が当該会社の議決権を有していない場合であっても、当該役員の同族関係者が議決権を有している限り、法人税法施行令第71条第1項第5号に規定する同族会社の役員に含まれることが明らかにされている。
 また、本通達の(3)では、所有割合を3の社員数割合とする法人にあっては、自らは持分会社の社員ではなく税法上のみなし役員にとどまる場合や社員ではあるが業務を執行する役員でない場合であっても、当該役員の同族関係者が社員又は業務を執行する社員である限り、同号に規定する同族会社の役員に含まれることを明らかにしている。

4  なお、所有割合の計算については、同族会社の判定をする場合と同じ取扱いとなることから、法人税基本通達1−3−1《株式会社における同族会社の判定》から1−3−8《同一の内容の議決権を行使することに同意している者がある場合の同族会社の判定》までの取扱いが準用されることとなる。本通達の(注)においてこのことを明らかにしている。

5  連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−2−6)を定めており、同様の改正を行っている。

【新設】 (継続的に供与される経済的利益の意義)

9−2−11 令第69条第1項第3号《定期同額給与の範囲等》に規定する「継続的に供与される済的な利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの」とは、その役員が受ける経済的な利益の額が毎月おおむね一定であるものをいうのであるから、例えば、次に掲げるものはこれに該当することに留意する。

(1) 9−2−9の(1)、(2)又は(8)に掲げる金額でその額が毎月おおむね一定しているもの

(2) 9−2−9の(6)又は(7)に掲げる金額(その額が毎月著しく変動するものを除く。)

(3) 9−2−9の(9)に掲げる金額で毎月定額により支給される渡切交際費に係るもの

(4) 9−2−9の(10)に掲げる金額で毎月負担する住宅の光熱費、家事使用人給料等(その額が毎月著しく変動するものを除く。)

(5) 9−2−9の(11)及び(12)に掲げる金額で経常的に負担するもの

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  平成18年度税制改正により、役員に対して支給する給与(退職給与、ストックオプションによるもの及び使用人兼務役員に対して支給する使用人分給与並びに事実を隠ぺいし又は仮装して経理することにより支給するものを除く。)のうち損金の額に算入されるものの範囲は、定期同額給与、事前確定届出給与及び一定の要件を満たす利益連動給与とされた。この改正後の規定においては、役員に対して継続的に供与される済的な利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるものは、定期同額給与に該当することとされている(法令691三)。

2  本通達は、この場合の「その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの」の範囲について、次のように例示的に明らかにしている。

(1) 役員に対する資産の贈与、資産の低廉譲渡又は用益の無償若しくは低価による提供で、その経済的利益の額が毎月おおむね一定しているもの
 これには、例えば、毎月支給する現物給与等で、その額がおおむね一定しているものがある。

(2) 役員に対する居住用の土地、家屋の無償若しくは低価による提供又は金銭の無償若しくは低利率による貸付けで、その経済的な利益の額が毎月著しく変動するもの以外のもの
  これらの経済的利益の供与では、例えば、金銭の貸付けであれば、元本の返済状況等により利息の額が逓減していき毎月の経済的利益の額が一定していないものもあろうが、そのような場合であってもその額が毎月著しく変動するものでなければ「その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの」として取り扱われる。

(3) 役員に交際費等の名義で支出したもののうちでその費途が不明なものやその法人の業務に関係がないと認められるもののうち、毎月定額により支給される渡切交際費に係るもの

(4) 役員の個人的費用のうち住宅の光熱費、家事使用人の給料等で法人が毎月負担するもので、その経済的利益の額が毎月著しく変動するもの以外のもの
 これらの経済的利益の供与では、例えば、住宅の光熱費では季節による変動が、家事使用人の給料等では毎月の給与とは別の賞与の支給などにより、必ずしも毎月の経済的利益の額が一定していないものもあろうが、そのような場合であってもその額が毎月著しく変動するものでなければ「その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの」として取り扱われる。

(5) 役員が会員となっている社交クラブの経常会費その他の費用又は役員の生命保険料で、法人が経常的に負担しているもの  
 これらの経済的利益の供与は、例えば、社交クラブの経常会費などは必ずしも毎月支出するものではないが、当該役員が現に受ける経済的利益の額がおおむね毎月一定であるものと考えられることから、法人が経常的に負担するものであれば、「その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの」として取り扱われる。

3  なお、定期同額給与に該当する経済的利益の供与に関連して、例えば、法人が役員にグリーン車の定期券を支給している場合でその定期券が6ヶ月定期であるときや、役員が負担すべき生命保険料を負担している場合でその保険料を年払契約により支払っているときについては、これらの支出が毎月行われるものでないことから、その供与される経済的利益の額は定期同額給与に該当しないのではないかとの疑義を抱く向きもあるようである。
 しかしながら、「その供与される利益の額が毎月おおむね一定」かどうかは、法人が負担した費用の支出時期によるのではなく、その役員が現に受ける経済的利益が毎月おおむね一定であるかどうかにより判定することとなる。したがって、上記のように、法人の負担した費用が、その購入形態や支払形態により毎月支出するものでない場合であっても、当該役員が供与を受ける経済的利益が毎月おおむね一定であるときは、定期同額給与に該当する。

4  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−2−10)を定めている。

【新設】 (定期同額給与の意義)

9−2−12 法第34条第1項第1号《定期同額給与》の「その支給時期が1月以下の一定の期間ごと」である給与とは、あらかじめ定められた支給基準(慣習によるものを含む。)に基づいて、毎日、毎週、毎月のように月以下の期間を単位として規則的に反復又は継続して支給されるものをいうのであるから、例えば、非常勤役員に対し年俸又は事業年度の期間俸を年1回又は年2回所定の時期に支給するようなものは、たとえその支給額が各月ごとの一定の金額を基礎として算定されているものであっても、同号に規定する定期同額給与には該当しないことに留意する。

(注) 当該非常勤役員に対する年俸又は期間俸等の給与につき令第69条第2項《事前確定届出給与の届出》に定めるところに従って納税地の所轄税務署長に届出をしている場合には、当該給与は法第34条第1項第2号《事前確定届出給与》に規定する給与に該当する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1 損金の額に算入される定期同額給与とは、役員に対して支給する給与で次に掲げるものとされている(法341一、法令691)。

1 その支給時期が1月以下の一定の期間ごとであり、かつ、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与

2 その支給時期が1月以下の一定の期間ごとであるもの(以下「定期給与」という。)の額につき当該事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日(以下「会計期間3月経過日」という。)までにその改定がされた場合における次に掲げる定期給与(法令691一)

) その改定前の各支給時期(当該事業年度に属するものに限る。において同じ。) における支給額が同額である定期給与

) その改定以後の各支給時期における支給額が同額である定期給与

3 定期給与の額につき当該法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由によりその改定がされた場合(減額した場合に限り、2に該当する場合を除く。)の当該事業年度のその改定前の各支給時期における支給額及びその改定以後の各支給時期における支給額がそれぞれ同額である定期給与(法令691二)

4 継続的に供与される経済的な利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの(法令691三)

  上記1又は2の「その支給時期が1月以下の一定の期間ごと」である給与とは、あらかじめ定められた支給基準(慣習によるものを含む。)に基づいて、毎日、毎週、毎月のように月以下の期間を単位として規則的に反復又は継続して支給されるものをいうことと解されており、この点、平成18年度税制改正前の法人税法における「定期の給与」と変わるところはない。したがって、例えば、非常勤役員に対する役員給与で、その額が各月ごとの一定額を基礎として定められているものであっても、年俸又は期間俸として年1回又は年2回といった所定の時期に支給するものは、支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与に当たらないため、定期同額給与には該当しない。
 本通達はこのことを明らかにしている。

2  ところで、平成18年度税制改正前の法人税法においては、役員に対する臨時的な給与のうち、他に定期の給与を受けていない者に対して継続して毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づき支給されるもの、例えば、非常勤役員に対して年1回又は年2回所定の時期に支給する給与は、役員報酬に該当し、不相当に高額な部分の金額及び事実を隠ぺいし又は仮装して経理することにより支給するものを除き、損金の額に算入することとされていた。
 上述のとおり、改正後の法人税法においては、このような給与は定期同額給与として損金の額に算入することはできないこととなっているが、他方、その給与が毎年所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づき支給するものであれば、事前確定届出給与として一定の時期までに所定の事項について所轄税務署長への届出を行うことにより損金の額に算入することができるのである。
 本通達の(注)において、このことを念のため明らかにしている。

3  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−2−11)を定めている。

(注)上記解説は、平成19年度税制改正前の法令の規定に基づいて作成している。
 なお、平成19年度税制改正により、同族会社に該当しない法人が、その役員の職務につき「所定の時期に確定額を支給する旨の定め」に基づいて支給する給与で、定期給与を支給しない役員に対して支給する給与については、その定めの内容に関する届出がない場合にも損金の額に算入することとされている(平成19年改正後の法341二)。

【新設】 (経営の状況の著しい悪化に類する理由)

9−2−13 令第69条第1項第2号《定期同額給与の範囲等》に規定する「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいうのであるから、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれないことに留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  定期給与(その役員に対して支給する給与で、その支給時期が1月以下の一定の期間ごとであるものをいう。)の額につきその法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由によりその改定がされた場合(減額された場合に限り、会計期間3月経過日までにその改定がされたものを除く。)において、当該事業年度の当該改定前の各支給時期における支給額及び当該改定以後の各支給時期における支給額がそれぞれ同額であるという要件を満たすものは、定期同額給与に該当し損金の額に算入されることとされている(法令691二)。
 この場合、どのような事情が生じたときが「その他これに類する理由」に当たるかについては、事柄の性質上、個々の実態に即して判断するほかなく、いずれにしても事前に定められていた役員給与の額を減額せざるを得ないやむを得ない事情が存するかどうかにより判定することとなると解される。ただし、「経営状況が著しく悪化」との規定振りから明らかなように、少なくとも、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどの理由は、これに含まれないこととなる。
 また、例えば、経営の状況の悪化により従業員の賞与を一律カットせざるを得ないような状況にある場合は、通常は、本通達にいう「経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情」がある場合に当たるといえよう。
 本通達はこのことを明らかにしている。

2  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−2−12)を定めている。

【新設】 (事前確定届出給与の意義)

9−2−14 法第34条第1項第2号《事前確定届出給与》に規定する給与は、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給される給与をいうのであるから、同号の規定に基づき納税地の所轄税務署長へ届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合にはこれに該当しないこととなり、原則として、その支給額の全額が損金不算入となることに留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  事前確定届出給与とは、その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与(定期同額給与及び利益に関する指標を基礎として算定される給与を除く。)で、その給与に係る職務の執行を開始する日と会計期間3月経過日とのいずれか早い日までに、納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関して所定の事項を記載した届出をしている場合のその給与をいうこととされている(法341二、法令692、法規22の31)。   
 したがって、事前確定届出給与として当該事業年度の損金の額に算入される給与は、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給するもの、すなわち、支給時期、支給金額が事前に確定し、実際にもその定めのとおりに支給される給与に限られるのである。このことからすれば、一般的には、所轄税務署長へ届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合には、事前に支給額が確定していたものといえないことから、事前確定届出給与に該当しないものとなり、それが増額支給であれば増額分だけでなく実際の支給額の全額が損金不算入となり、減額支給であれば実際に支給した金額が損金不算入となる。

2  ところで、役員の職務執行の期間は、一般的には、定時株主総会から次の定時株主総会までであるところ、その期間中に2回以上の事前確定届出給与の支給を予定している場合も少なくないと思われる。この場合、これらの事前確定届出給与がその定めのとおりに支給されたかどうかをどのように判定するのか、という問題がある。
 例えば、3月決算法人が、平成18年6月26日から平成19年6月25日までを職務執行期間とする役員に対し、平成18年12月及び平成19年6月にそれぞれ200万円の給与を支給することを定め、所轄税務署長に届け出た場合において、平成18年12月には100万円しか支給せず、翌年6月には満額の200万円を支給したときは、12月支給分のみが「定め」に従って支給されていないとして100万円が損金不算入となるのか、12月支給分及び6月支給分の両方が「定め」に従って支給されていないとして300万円全額が損金不算入となるのか、という問題である。
 この点、一般的に、役員給与は定時株主総会から次の定時株主総会までの間の職務執行の対価であると解されることから、その支給が複数回にわたる場合であっても、定めどおりに支給されたかどうかは当該職務執行の期間を一つの単位として判定すべきであると考えられる。したがって、複数回の支給がある場合には、原則として、その職務執行期間に係る当該事業年度及び翌事業年度における支給について、その全ての支給が定めどおりに行われたかどうかにより、事前確定届出給与に該当するかどうかを判定することとなり、上記の事例の場合には平成18年12月支給分と平成19年6月支給分の合計額300万円が損金に算入されないこととなる。

3  ただし、上記と同様にその役員の職務執行期間中に複数回の事前確定届出給与があり、そのうち定めどおりに支給されなかったものがある場合であっても、既に支給済みの事前確定届出給与の損金算入が認められる余地もあり得るものと考えられる。
 例えば、3月決算法人が平成18年6月26日から平成19年6月25日までを職務執行期間とする役員に対し、平成18年12月及び平成19年6月にそれぞれ200万円の給与を支給することを定め、所轄税務署長に届け出た場合において、当該事業年度(平成19年3月期)中の支給である平成18年12月支給分は定めどおりに支給したものの、翌事業年度(平成20年3月期)となる平成19年6月支給分のみを定めどおりに支給しなかった場合は、その支給しなかったことにより直前の事業年度(平成19年3月期)の課税所得に影響を与えるようなものではないことから、翌事業年度(平成20年3月期)に支給した給与の額のみについて損金不算入と取り扱っても差し支えないものと考えられる。

4  なお、事前確定届出給与については、その届出に当たって、支給額の一部が未払いとなった場合の取扱いについての照会が寄せられているようである。この点については、その事前確定届出給与が債務として確定したものであれば他の費用と取扱いを違える必要はなく、未払計上であっても支給した金額に含まれるものとも考えられる。
 しかしながら、事前確定届出給与とは、「その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与」であることからすれば、その届出の時点において未払いとなることが見込まれるような場合には、そもそも「事前」に確定額を支給する「定め」が存していたのかどうかという疑問が生ずることとなる。会社と役員との関係は委任に関する規定に従うこととされており(会社法330)、事前確定届出給与は、定期同額給与と同様に、その委任を受けた職務執行の対価であることからすれば、未払いとなることを前提にその対価の支給を決定しておくことはあり得ないと考えられるからである。このような観点からすれば、事前確定届出給与の「確定額」には未払いが見込まれる金額が含まれることはなく、未払いが見込まれる金額が含まれている場合のその金額は「確定額」とは言えないこととなろう。
 いずれにしても、事前確定届出給与について、その支給額の一部につき未払計上がされた場合には、給与としての実態が伴っているかどうかその実質により判断することとなるとともに、上述の考え方から、所轄税務署長へ届け出た金額が確定額であったのかどうか、更には、そもそも「その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する定め」が存していたのかどうかなどについて、個々に判断していくこととなろう。

5  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−2−13)を定めている。

(注)上記解説は、平成19年度税制改正前の法令の規定に基づいて作成している。
 なお、平成19年度税制改正により、事前確定届出給与について既に届出をしている法人が臨時改定事由又は業績悪化改定事由に基因してその定めの内容を変更する場合には、変更の届出を行うことができることとされている(平成19年改正後の法令693)。

【新設】 (確定額の意義)

9−2−15 法第34条第1項第2号《事前確定届出給与》の「確定額」には、現物資産により支給するもの、支給額の上限のみを定めたもの及び一定の条件を付すことにより支給額が変動するようなものは、これに含まれない。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  事前確定届出給与は、その役員の職務につき所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与に限られる(法341二)。したがって、現物資産による支給など支給金額が確定しているとはいえないものは対象とならない。
 また、単に支給額の上限のみを定めたもの(例えば、「○○○万円以下の金額とする」等)や一定の条件を付すことにより支給額が変動することとなるものも対象とならない。
 本通達はこのことを明らかにしている。

2  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−2−14)を定めている。

【新設】 (職務の執行を開始する日)

9−2−16 令第69条第2項《事前確定届出給与の届出》の「職務の執行を開始する日」とは、その役員がいつから就任するかなど個々の事情によるのであるが、例えば、定時株主総会において役員に選任されその日に就任した者及び定時株主総会の開催日に現に役員である者(同日に退任する者を除く。)にあっては、当該定時株主総会の開催日となる。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  事前確定届出給与に係る職務の執行を開始する日がいつであるかについては、基本的には、その役員がいつから就任する者であるかなど、個別の事情に応じて判断することになろう。
 ただ、一般的には、その会社の定時株主総会において役員に選任されその日にその職務に就任した者や当該定時株主総会の日に現に役員である者については、当該定時株主総会の開催日となると解される。会社法においては役員の選任やその職務執行の対価の決定が株主総会の決議により行われること(会社法3291、3321、3611)、取締役は計算書類を定時株主総会に提出しその承認を受けなければならないこと(会社法438)などと規定されているところからすれば、役員給与は定時株主総会から次の定時株主総会までの間の職務執行の対価と解するのが相当である。事前確定届出給与も役員の職務執行の対価であることに変わりはないから、事前確定届出給与に係る職務の執行も定時株主総会終結の時から開始されることとなる。したがって、「職務の執行を開始する日」とは、定時株主総会の開催日ということになる。

2  ただし、実務上、役員給与については月払が一般的であろうから、例えば、3月決算法人が5月26日に定時株主総会を開催し、定時株主総会の翌月の6月1日から開始する職務に対して役員給与を定めるようなケースも多いと考えられる。
 このように、役員給与について、「職務の執行を開始する日」を定時株主総会の日以外と定めた場合であっても、その日が定時株主総会の翌月初であり、かつ、定時株主総会の日に近接する日であれば、税務上も、事前確定届出給与に係る「職務の執行を開始する日」として企業実務の観点から是認し得るものであると考えられる。
 したがって、この事例の場合には、

1 まず定時株主総会において「所定の時期に確定額を支給する旨の定め」を定めて、

2 職務の執行を開始する日と会計期間3月経過日とのいずれか早い日、すなわち、6月1日と6月30日とのいずれか早い日である6月1日までにその「定め」の内容に関する届出を行い、

3 6月1日には実際に職務の執行を開始しており、

4 その「定め」どおりに、確定額として届け出た金額を支給すれば、

事前確定届出給与に該当することとなる。

3  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−2−15)を定めている。

(注) 上記解説は、平成19年度税制改正前の法令の規定に基づいて作成している。
 平成19年度税制改正により、事前確定届出給与の届出期限について緩和が図られ、実務上の問題は解決されていることから、上記解説中の「2」のような取扱いはないこととなる。

【新設】 (業務執行役員の意義)

9−2−17 業務執行役員(法第34条第1項第3号《損金の額に算入される利益連動給与》に規定する業務執行役員をいう。以下9−2−19において同じ。)とは、法人の業務を執行する役員をいうのであるから、例えば、法人の役員であっても、取締役会設置会社における代表取締役以外の取締役のうち業務を執行する取締役として選定されていない者、社外取締役、監査役及び会計参与は、これに含まれないことに留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  損金の額に算入することができる利益連動給与は、業務執行役員に支給するものに限られている(法341三)。この業務執行役員とは、利益連動給与に係る算定方法についての報酬委員会での決定その他これに準ずる適正な手続の終了の日において次に掲げる役員に該当する者をいうこととされている(法令694)。
1 会社法第363条第1項各号《取締役会設置会社の取締役の権限》に掲げる取締役
2 会社法第418条《執行役の権限》の執行役
3 1及び2に掲げる役員に準ずる役員
 上記の1は取締役会設置会社の代表取締役及び代表取締役以外の取締役であって取締役会の決議によって業務を執行する取締役として選任された者をいい、2は委員会設置会社における執行役が該当する。また、31又は2に該当しない者のうち実質的に法人業務を執行している役員(例えば、取締役会を設置していない会社の取締役、持分会社における業務を執行する社員等)がこれに当たることとなる。
 したがって、その性格上、そもそも業務を執行することがないこととされている役員、例えば、業務を執行する取締役又は執行役でないこととされている社外取締役、業務を執行することができないこととされている委員会設置会社の取締役、取締役の職務の執行を監査することとされている監査役は、業務執行役員には該当しないこととなる。
 本通達は、このことを留意的に明らかにしている。

2  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−2−16)を定めている。

≪参考≫
○ 会社法(抄)
(定義)

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一〜十四 省略

十五 社外取締役 株式会社の取締役であって、当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第三百六十三条第一項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ、過去に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないものをいう。

十六〜三十四 省略

(業務の執行)

第三百四十八条 取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く。以下この条において同じ。)の業務を執行する。

2〜4 省略

(取締役会設置会社の取締役の権限)

第三百六十三条 次に掲げる取締役は、取締役会設置会社の業務を執行する。

一 代表取締役

二 代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの

2 省略

(監査役の権限)

第三百八十一条 監査役は、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行を監査する。この場合において、監査役は、法務省令で定めるところにより、監査報告を作成しなければならない。

2〜4 省略

(委員会設置会社の取締役の権限)

第四百十五条 委員会設置会社の取締役は、この法律又はこの法律に基づく命令に別段の定めがある場合を除き、委員会設置会社の業務を執行することができない。

(執行役の権限)

第四百十八条 執行役は、次に掲げる職務を行う。

一 第四百十六条第四項の規定による取締役会の決議によって委任を受けた委員会設置会社の業務の執行の決定

二 委員会設置会社の業務の執行

(業務の執行)

第五百九十条 社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する。

2、3 省略

【新設】 (確定額を限度としている算定方法の意義)

9−2−18 法第34条第1項第3号イ(1)《損金の額に算入される利益連動給与》の「確定額を限度としている算定方法」とは、その支給額の上限が具体的な金額をもって定められていることをいうのであるから、例えば、「経常利益の○○%を限度として支給する。」という定め方は、これに当たらない。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  損金の額に算入することができる利益連動給与は、その算定方法について確定額を限度としているものであることが要件の一つとされている(法341三イ(1))。この場合の「確定額を限度としている」とは、「○○○万円を上限とする。」というように、その支給額の上限が具体的に金額をもって定められていることを要することから、例えば、「経常利益の○○%を限度とする。」といった支給額の上限が金額によらないものはこの要件を満たさないこととなる。
 本通達はこのことを念のため明らかにしているものである。

2  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−2−17)を定めている。

【新設】 (算定方法の内容の開示)

9−2−19 法第34条第1項第3号イ(3)《損金の額に算入される利益連動給与》の客観的な算定方法の内容の開示とは、業務執行役員のすべてについて、当該業務執行役員ごとに次に掲げる事項を開示することをいうのであるから、留意する。
(1) その利益連動給与の算定の基礎となる利益に関する指標
(2) 支給の限度としている確定額
(3) 客観的な算定方法の内容

(注) 算定方法の内容の開示に当たっては、個々の業務執行役員ごとに算定方法の内容が明らかになるものであれば、同様の算定方法を採る利益連動給与について包括的に開示することとしていても差し支えない

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  損金の額に算入することができる利益連動給与は、その法人の業務執行役員のすべてに対して支給するもので、かつ、個々の業務執行役員に支給する利益連動給与がそれぞれ法令の要件を満たすものでなければならないこととされている(法341三)。
 したがって、その算定方法の内容の開示についても、業務執行役員のすべてについてそれぞれ行うこととなる(法341三イ(3))。具体的には、その法人の業務執行役員ごとに、1利益連動給与の算定の基礎となる利益に関する指標、2限度としている確定額及び3客観的な算定方法の内容を開示する必要があるのである。
 ただし、個々の業務執行役員に支給する利益連動給与の算定方法の内容が結果的に明らかになるものであれば要件を満たすこととなる。したがって、算定方法が同様の利益連動給与について算定方法の内容を包括的に開示することを妨げるものではないし、開示の対象はあくまで利益連動給与の算定方法の内容であり、役員の個人名の開示を求めるものではなく、その肩書き別に利益連動給与の算定方法の内容が明らかにされていれば足りることになる。
 本通達は、これらのことを明らかにしている

2  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−2−18)を定めている。

【新設】 (利益に関する指標の数値が確定した時期)

9−2−20 令第69条第8項《損金の額に算入される利益連動給与》の規定の適用上、利益に関する指標の数値が確定した時とは、法人が会社法第438条第2項《計算書類等の定時株主総会への提出等》の規定により定時株主総会において計算書類の承認を受けた時をいう。

(注) 法人が同法第439条《会計監査人設置会社の特則》の規定の適用を受ける場合には、取締役が計算書類の内容を定時株主総会へ報告した時となる。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  損金の額に算入することができる利益連動給与は、当該事業年度の利益に関する指標が確定した後1月以内に支払われ、又は支払われる見込みであることが要件の一つとされている(法令698一)。本通達は、この場合の「利益に関する指標が確定した」時がいつであるかを明らかにしている。
 会社法においては、取締役は貸借対照表、損益計算書等の計算書類を定時株主総会に提出し又は提供し、その承認を受けなければならないこととされている(会社法438)。このような会社法の規定からすれば、「利益に関する指標の数値が確定した」時とは、定時株主総会により当該法人の計算書類の承認を受けた時をいうこととなる。
 なお、会計監査人設置会社であって会社法第439条《会計監査人設置会社の特例》の規定の適用を受ける場合には、取締役は計算書類の内容につき取締役会の承認を受ければ足り、定時株主総会における承認を受ける必要はないこととされている。この場合であっても、取締役は、その計算書類の内容を定時株主総会に報告しなければならないこととされており、計算書類の内容の定時株主総会への報告により一連の手続を了することとなることから、この定時株主総会に報告した時を「利益に関する指標の数値が確定した」時と解することが相当である。本通達の(注)はこのことを明らかにしている。

2  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−2−19)を定めている。

≪参考≫
○ 会社法(抄)
(計算書類等の作成及び保存)
第四百三十五条 省略

2  株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。

3、4 省略

(計算書類等の監査等)

第四百三十六条 省略

2  省略

3  取締役会設置会社においては、前条第二項の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書(第一項又は前項の規定の適用がある場合にあっては、第一項又は前項の監査を受けたもの)は、取締役会の承認を受けなければならない。
(計算書類等の定時株主総会への提出等)
第四百三十八条 次の各号に掲げる株式会社においては、取締役は、当該各号に定める計算書類及び事業報告を定時株主総会に提出し、又は提供しなければならない。

一 第四百三十六条第一項に規定する監査役設置会社(取締役会設置会社を除く。) 第四百三十六条第一項の監査を受けた計算書類及び事業報告

二 会計監査人設置会社(取締役会設置会社を除く。) 第四百三十六条第二項の監査を受けた計算書類及び事業報告

三 取締役会設置会社 第四百三十六条第三項の承認を受けた計算書類及び事業報告

四 前三号に掲げるもの以外の株式会社 第四百三十五条第二項の計算書類及び事業報告

2  前項の規定により提出され、又は提供された計算書類は、定時株主総会の承認を受けなければならない。

3  取締役は、第一項の規定により提出され、又は提供された事業報告の内容を定時株主総会に報告しなければならない。

(会計監査人設置会社の特則)

第四百三十九条 会計監査人設置会社については、第四百三十六条第三項の承認を受けた計算書類が法令及び定款に従い株式会社の財産及び損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合には、前条第二項の規定は、適用しない。この場合においては、取締役は、当該計算書類の内容を定時株主総会に報告しなければならない。

【改正】 (他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したものの意義)

9−2−26 法人が、使用人兼務役員の使用人としての職務に対する賞与を、他の使用人に対する賞与の支給時期に未払金として経理し、他の役員への給与の支給時期に支払ったような場合には、当該賞与は、令第70条第3号《過大な役員給与の額》に規定する「他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したもの」に該当することに留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  平成18年度税制改正により、使用人兼務役員に対する使用人としての職務に対する給与については、不相当に高額な部分の金額は損金の額に算入されないこととされている(法342)。この不相当に高額な部分の金額について、当該使用人兼務役員の使用人としての職務に対する賞与で他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したものの額は、これに該当することとされている(法令70三)。
 本通達は、この場合の「他の使用人に対する賞与の支給時期と異なる時期に支給したもの」に関して、例えば、他の使用人に対する賞与の支給時期にその支払を行わずに未払金として経理し、他の役員への給与の支給時期に支払ったような場合は、その支払った金額は不相当に高額な部分の金額として損金の額に算入されないこととなることを明らかにしている。

2  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−2−25)を定めており、同様の改正を行っている。

【廃止】(役員の歩合給若しくは能率給又は超過勤務手当)

9−2−15 法人がその役員に対して月俸、年俸等の固定給のほかに歩合給若しくは能率給又は超過勤務手当(使用人兼務役員に対する超過勤務手当に限る。)を支給している場合において、これらの支給が使用人に対する支給基準と同一の基準によっているときは、これらの給与は法第35条第4項《賞与》に定める臨時的な給与としないで定期の給与とする。

※下線部分が改正部分である。

【新設】 (経過的取扱い(3)…役員の歩合給若しくは能率給又は超過勤務手当)

  法人が次に掲げる事業年度及び期間において役員に対して支給した歩合給又は能率給のうち、この法令解釈通達による改正前の9−2−15の取扱いにより定期の給与とされるものは、法第34条第1項第1号《定期同額給与》に規定する定期同額給与に該当するものとする((2)に掲げる期間については、(1)に掲げる事業年度についてこの経過的取扱いを受ける場合に限る。)。

(1) 平成18年4月1日から平成19年3月31日までの間に開始する事業年度

(2) (1)に掲げる事業年度のうち最も新しい事業年度終了の日の翌日から同日以後に行われる役員給与の改定までの期間(同日から3月を経過する日(保険会社にあっては、4月を経過する日)までの期間に限る。)

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  平成18年度税制改正前の法人税法上の取扱いとして、法人がその役員に対して月俸、年俸等の固定給のほかに歩合給若しくは能率給又は超過勤務手当(使用人兼務役員に対する超過勤務手当に限る。)を支給している場合において、これらの支給が使用人に対する支給基準と同一の基準によっているときは、これらの給与は改正前の法人税法第35条第4項《賞与》に定める臨時的な給与としないで定期の給与とし、損金算入を認めてきたところである。
 改正後の法人税法の規定上、損金の額に算入することができる定期同額給与は、「その支給時期が1月以下の一定の期間ごとであり、かつ、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与」をいうことから、たとえ一定の算定基準に基づき、規則的に継続して支給されるものであっても、その支給額が同額でない給与は、定期同額給与には該当しないこととなり(法341一)、各月の支給額が異なることとなる歩合給や能率給等は、一定の利益連動給与に該当するものを除き、損金の額に算入されないこととなる。このため、今般、平成18年度税制改正前の法人税に関する取扱いである法人税基本通達9−2−15《役員の歩合給若しくは能率給又は超過勤務手当》は廃止されたところである。
 したがって、従来、上記通達に基づいて役員に対する歩合給等を損金の額に算入していた法人についても、今後は、役員に対する歩合給等は損金の額に算入することはできないこととなる。
 なお、歩合給や能率給等は、一般には、使用人兼務役員に対して支給されるケースが多いものと思われるが、使用人兼務役員に支給する使用人としての職務に対する給与について歩合制を採用している場合は、不相当に高額なものに該当しない限り、原則として、損金の額に算入されることとなる(法3412)。

2  従来、改正前の本通達に基づいて役員に対する歩合給等を損金の額に算入していた法人にあっては、今後、役員給与について給与体系の見直し等を行う必要も生じてくるであろうが、給与体系の見直しには相応の期間を要することや役員給与支給規程等の改定時期は一般に定時株主総会の時であると考えられることなどを考慮すれば、役員給与の改定までの間、やむを得ず、歩合給等を支給している法人については、その改定までの間に支給した歩合給等を定期同額給与として取り扱って差し支えないものと考えられる。
 そこで、経過的取扱い(3)により、法人が次に掲げる事業年度及び期間において役員に対して支給した歩合給又は能率給のうち、改正前の本通達の取扱いにより定期の給与とされるものは、法人税法第34条第1項第1号《定期同額給与》に規定する定期同額給与に該当するものと取り扱うこととしている((2)に掲げる期間については、(1)に掲げる事業年度についてこの経過的取扱いを受ける場合に限る。)。

(1) 平成18年4月1日から平成19年3月31日までの間に開始する事業年度

(2) (1)に掲げる事業年度のうち最も新しい事業年度終了の日の翌日から同日以後に行われる役員給与の改定までの期間(同日から3月を経過する日(保険会社にあっては、4月を経過する日)までの期間に限る。)

3  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通 経過的取扱い(3))を定めている。

【改正】 (役員の分掌変更等の場合の退職給与)

9−2−32 法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際しその役員に対し退職給与として支給した給与については、その支給が、例えば次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる。

(1) 常勤役員が非常勤役員(常時勤務していないものであっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)になったこと。

(2) 取締役が監査役(監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等で令第71条第1項第5号《使用人兼務役員とされない役員》に掲げる要件のすべてを満たしている者を除く。)になったこと。

(3) 分掌変更等の後におけるその役員(その分掌変更等の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと。

(注) 本文の「退職給与として支給した給与」には、原則として、法人が未払金等に計上した場合の当該未払金等の額は含まれない。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  本通達は、法人がその役員の分掌変更又は改選による再任等に際して役員退職給与を支給した場合において、その分掌変更等が実質的に退職したと同様の事情にあるときは、その分掌変更等に際して支給した退職給与は、その額が過大でない限り損金の額に算入することとし、その分掌変更が退職と同様の事情にあるかどうかは、その分掌変更後における職務の内容、役員としての地位の激変等の事実により実質的に判定することを明らかにしている。

2  本通達では、この「実質的に退職したと同様の事情にあると認められること」の例示として、3項目を掲げているところである。このうち(3)においては、改正前は「分掌変更等の後における報酬が激減(おおむね50%以上の減少)したこと。」が掲げられていたところであるが、これについて、形式的に報酬の額を50%以上引き下げればその際にその役員に支給した臨時的な給与はすべて退職給与として損金算入することが可能であると曲解する向きも極めて少数ではあるが存していたようである。
 しかしながら、本通達の(1)から(3)は、従来からの通達の文言上も明らかなように、あくまでも例示であり、たとえ形式的に報酬が激減したという事実があったとしても実質的に退職したと同様の事情にない場合には、その支給した臨時的な給与を退職給与として損金算入できる余地がないことは言うまでもない。
 そこで、今回の改正により、仮にその役員の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したとしても、その分掌変更等の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者については、本通達の取扱いの適用はない旨を明らかにしたところである。

3  更に、今回の改正では、本通達に(注)が追加されている。
 退職給与は、本来「退職に因り」支給されるものであるが、本通達においては引き続き在職する場合の一種の特例として打ち切り支給を認めているものであり、あくまでも法人が分掌変更等により「実質的に退職したと同様の事情にあると認められる」役員に対して支給した臨時的な給与を退職給与として認める趣旨である。したがって、本通達の適用により退職給与とされるものは、法人が実際に支払ったものに限られ、未払金等に計上したものは含まれないこととなるのである。
 ただし、役員退職給与という性格上、その法人の資金繰り等の理由による一時的な未払金等への計上までも排除することは適当ではないことから、「原則として、」という文言を付しているものである(このような場合であっても、その未払いの期間が長期にわたったり、長期間の分割支払いとなっているような場合には本通達の適用がないことは当然であろう。)。

4  上記2及び3の改正は、平成18年度税制改正により役員退職給与について損金経理要件が撤廃されたことを踏まえ、取扱いの明確化を図ったものであり、その内容はこれまで実務において取り扱われてきたものと変わりはなく、今回の改正によって本通達の実質的な内容に変更はない。

5  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−2−31)を定めており、同様の改正を行っている。

【新設】 (役員が使用人兼務役員に該当しなくなった場合の退職給与)

9−2−37 使用人兼務役員であった役員が、法第34条第1項《役員給与の損金不算入》に規定する使用人としての職務を有する役員に該当しないこととなった場合において、その使用人兼務役員であった期間に係る退職給与として支給した金額があるときは、たとえその額がその使用人としての職務に対する退職給与の額として計算されているときであっても、その支給した金額は、当該役員に対する給与(退職給与を除く。)とする。
 ただし、その退職給与として支給した給与が次のすべてに該当するときは、その支給した金額は使用人としての退職給与として取り扱うものとする。

(1) 当該給与の支給の対象となった者が既往に使用人から使用人兼務役員に昇格した者(その使用人であった期間が相当の期間であるものに限る。)であり、かつ、当該者に対しその昇格をした時にその使用人であった期間に係る退職給与の支給をしていないこと。

(2) 当該給与の額が、使用人としての退職給与規程に基づき、その使用人であった期間及び使用人兼務役員であった期間を通算してその使用人としての職務に対する退職給与として計算されており、かつ、当該退職給与として相当であると認められる金額であること。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  使用人兼務役員が常務取締役等となった場合に、その使用人兼務役員であった期間に係る退職給与の額を計算して、これを退職給与として打切支給することができるかどうかという問題がある。
 この点、税務上は、たとえ使用人兼務役員といえども、役員は役員であって、それが常務取締役等になったからといって、特にその使用人としての地位を退職したようなものではない。役員でありながら、単にその役員としての地位に変動があっただけのことであるから、退職というような事実は存しない。
 したがって、仮にこのような場合に、法人が使用人兼務役員であった期間に係る退職給与として一定の金額を支給したようなときは、税務上は、その支給額については、当該役員に対する給与(退職給与を除く。)として、原則として、損金不算入となる。
 ただし、使用人兼務役員への給与の支給が次のすべてに該当するときは、特段課税上の弊害もないことから、その支給した金額については、退職給与と取り扱って差し支えないものと考えられる。

イ 当該給与の支給の対象となった者が既往に使用人から使用人兼務役員に昇格した者(その使用人であった期間が相当の期間であるものに限る。)であり、かつ、当該者に対しその昇格をした時にその使用人であった期間に係る退職給与の支給をしていないこと。

ロ 当該給与の額が、使用人としての退職給与規程に基づき、その使用人であった期間及び使用人兼務役員であった期間を通算してその使用人としての職務に対する退職給与として計算されており、かつ、当該退職給与として相当であると認められる金額であること。
 本通達において、これらのことを明らかにしている。

2  なお、連結納税制度においても同様の通達(連基通8−2−36)を定めている。

【改正】 (出向先法人が支出する給与負担金に係る役員給与の取扱い

9−2−46 出向者が出向先法人において役員となっている場合において、次のいずれにも該当するときは、出向先法人が支出する当該役員に係る給与負担金の支出を出向先法人における当該役員に対する給与の支給として、法第34条《役員給与の損金不算入》の規定が適用される。

(1) 当該役員に係る給与負担金の額につき当該役員に対する給与として出向先法人の株主総会、社員総会又はこれらに準ずるものの決議がされていること。

(2) 出向契約等において当該出向者に係る出向期間及び給与負担金の額があらかじめ定められていること。

(注)1  本文の取扱いの適用を受ける給与負担金について、同条第1項第2号《事前確定届出給与》の規定の適用を受ける場合には、出向先法人がその納税地の所轄税務署長にその出向契約等に基づき支出する給与負担金に係る定めの内容に関する届出を行うこととなる。

   2  出向先法人が給与負担金として支出した金額が出向元法人が当該出向者に支給する給与の額を超える場合のその超える部分の金額については、出向先法人にとって給与負担金としての性格はないことに留意する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  法人税基本通達9−2−45《出向先法人が支出する給与負担金》により、出向者に対する給与を出向元法人が支給することとしているため、出向先法人が自己の負担すべき給与に相当する金額(以下「給与負担金」という。)を出向元法人に支出したときは、当該給与負担金の額は、出向先法人におけるその出向者に対する給与として取り扱うこととしている。
 本通達は、出向者が出向先法人において役員となっている場合に、出向先法人の支出した給与負担金の取扱いを明らかにしている。

2  改正前の本通達においては、出向役員に係る給与負担金については、出向元法人が当該出向者に支給した給与の支給形態に応じて、出向先法人における報酬か賞与かの区分判断をすることを明らかにしていた。

3  法人税法第34条《役員給与の損金不算入》は、法人税法第22条第3項《各事業年度の所得の金額の計算》の別段の定めとして、役員給与の損金算入に関し一定の制限を設けている。この役員給与の損金算入の基準に関し、平成18年度の税制改正により、従来の支給形態(定期定額か臨時か)による判断基準が改められ、その給与が定期同額給与、事前確定届出給与又は一定の利益連動給与のいずれに該当するかにより損金の額に算入するかどうかを判定することとされた。このため、出向先法人が負担する給与負担金について、改正後はどのような要件を満たせば損金算入されるのかという問題がある。
 この点、平成18年改正後の法人税法により損金算入の対象とされる役員給与は、定期同額給与、事前確定届出給与及び利益連動給与とされ、いずれもその役員給与があらかじめ定められているかどうかを重要な判断基準として整理されたものであり、あらかじめ定められたところに従い支給される給与については、法人税法第34条第1項各号の要件を満たせば損金算入されるという制度であるといえる。
 こうした制度の趣旨に鑑みれば、あらかじめ定められたところに従い支出される給与負担金については、給与負担金の支出を出向先法人における役員給与の支給として法令上の要件をあてはめることが相当であると考えられる。
 具体的には、給与負担金に関して、本通達の(1)及び(2)に掲げる要件を満たすものであれば、給与負担金の支出時期、支出金額を役員給与の支給時期、支給金額として、法人税法第34条第1項第1号又は第2号の要件をあてはめ、その損金算入の可否を判定することとなる。すなわち、本通達の(1)及び(2)に掲げる要件を満たす給与負担金のうち、毎月定額で支出する給与負担金は定期同額給与に該当し、所定の時期に確定額を支出する給与負担金については、出向先法人が所定の期限までに届出を行うことを要件として事前確定届出給与に該当するという取扱いを受けることとなる。

【例】
 出向元法人は出向者A(出向先法人で役員となる。)に対し、月給30万円、賞与60万円(年2回)を支給する。
 この場合、出向先法人が負担する給与負担金の額は、出向元法人と出向先法人との間における契約の内容に応じ、それぞれ次のとおり取り扱われる。

出向契約等の内容 給与負担金の取扱い
1 出向先法人は出向者Aに係る給与負担金として、毎月40万円を出向元法人に支出する。  定期同額給与に該当。
2 出向先法人は出向者Aに係る給与負担金として、半年ごとに240万円を出向元法人に支出する。  出向先法人が所定の届出を行うことを要件として事前確定届出給与に該当。
3 出向先法人は出向者Aに係る給与負担金として、毎月30万円、賞与支給月に各60万円を支給する。  毎月支出する給与負担金の額は、定期同額給与に該当。
 賞与支給月に支出する給与負担金の額は、出向先法人が所定の届出を行うことを要件として事前確定届出給与に該当。

4  本通達の(1)においては、当該役員に係る給与負担金の額につき当該役員に対する給与として出向先法人の株主総会、社員総会又はこれらに準ずるものの決議がされていることを一つの要件としている。出向先法人において、給与負担金を役員としての職務執行の対価として認識しているものについては、出向元法人における支給形態にかかわらず、給与負担金の支出そのものを役員給与の支給とみなして法人税法第34条第1項各号の適用要件をあてはめることが合理的と考えられる。このため、給与負担金が出向先法人において役員給与として認識されて支出されているということの判断基準として、出向先法人において他の役員給与と同様の手続により出向役員の給与の額についても株主総会等における決議を経ることを要件としているものである。
 なお、「株主総会、社員総会又はこれらに準ずるものの決議」には、例えば、総代会などの決議のほか、株主総会では役員給与の総額を決議し、各人別の具体的金額は取締役会に委任することを決議している場合のその決議が含まれる。

5  本通達の(2)においては、出向契約等においてその出向者に係る出向期間及び給与負担金の額があらかじめ定められていることを要件としている。この要件は、平成18年度税制改正後の法人税法において損金の額に算入されることとなる定期同額給与、事前確定届出給与又は利益連動役員給与は、いずれもあらかじめ定められたところにしたがって支給される給与が前提とされている点に鑑み、給与負担金についてあらかじめ定められていることの判断基準として、出向契約等において当該出向者に係る出向期間及び給与負担金の額が定められていることを要件としたものである。したがって、出向契約書、協定書、覚書などにより法人間で取り交わされる合意の内容を明らかにしておく必要があろう。

6  本通達の(1)及び(2)の要件を満たす給与負担金については、法人税法第34条の規定が適用されるのであるが、例えば、出向元法人における賞与相当額を賞与支給月の給与負担金として支出することとしている場合や、給与負担金を四半期ごと又は半年ごと等に支払うこととしている場合等には、法人税法第34条第1項第2号に定める事前確定届出給与の届出を期限までに行うことにより、損金の額に算入されることとなる。この場合、給与負担金の支出を出向先法人が支給する役員給与として取り扱うことから、出向先 法人が所轄税務署長に届出を行うこととなる。本通達の注1においてこのことを明らかにしている。

7  また、本通達の注2において、一定の期間内に出向先法人が給与負担金として支出した金額の合計額が、出向元法人が当該出向者に支給する給与の額の合計額を超える場合のその超える部分の金額については、出向先法人にとって給与負担金としての性格はないことを明らかにしている。
 なお、この超える部分の金額が出向先法人にとってどのように取り扱われるかという点については、当該超える部分の金額の支出についての理由が問題となる。例えば、その出向に伴って経営指導料等を支出すべき理由があると認められ、かつ、その支出額が経営指導料として適正な金額の範囲内のものであるならば、その支出したことにそれなりの理由があるから、そのまま損金算入が認められる。これに対し、何らの理由もなくかかる高額負担をしたということになれば、その高額部分については出向元法人に対する寄附金としての取扱いを受けることとなる。

8  ところで、出向元法人における使用人給与のベースアップ等に伴い、事業年度の途中に給与負担金の額の改定が行われる場合がある。この場合、1給与負担金の改定事由が、出向元法人におけるベースアップ、定期昇給又は賞与の支給率の変動によるものであり、かつ、2その改定額等が出向元法人における他の使用人と同じ基準によるものである場合には、給与負担金の額を改定すべき相応の理由があり、また、恣意的な経理が介入しないことから、次の給与負担金の区分に応じ、その増額部分について、それぞれ次のとおり取り扱うこととなる。

(1) 給与負担金が定期同額給与に相当していたもの
 法人税法施行令第69条第1項第1号に定める3月を経過する日までに改定がされた場合にあっては、当該給与負担金は定期同額給与に該当し損金算入されるが、これ以外の改定の場合には、給与負担金の増額部分について損金不算入となる。

(2) 給与負担金が事前確定届出給与に相当していたもの
 当初の定めと異なる支給をしたこととなり、「所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与」に該当しないことから、増額部分は当該定めとは別の定めに基づき支給されたものとして損金不算入となる。

9  なお、連結納税制度においても同様の通達(連基通8−2−45)を定めており、同様の改正を行っている。

 (注)上記解説中「8」は、平成19年度税制改正前の法令に基づく取扱いである。
 なお、平成19年度税制改正により、役員給与の額の改定事由等について改正が行われている。

【新設】 (経過的取扱い(4)…出向先法人が支出する給与負担金に係る役員給与の取扱い)

   法人が次に掲げる事業年度及び期間において支出した給与負担金の額については、この法令解釈通達による改正後の9−2−46に定める出向先法人の株主総会、社員総会又はこれらに準ずるものの決議がされていない場合であっても、同通達の取扱いによることができるものとする。

(1) 平成18年4月1日から平成19年3月31日までの間に開始する事業年度

(2) (1)に掲げる事業年度のうち最も新しい事業年度終了の日の翌日から同日以後に行われる役員給与の改定までの期間(同日から3月を経過する日(保険会社にあっては、4月を経過する日)までの期間に限る。)

(注) 法人がこの法令解釈通達による改正後の9−2−46及び本文の取扱いの適用を受けない場合において、(1)及び(2)に掲げる事業年度及び期間において支出した給与負担金の額のうち、この法令解釈通達による改正前の9−2−34の取扱いにより報酬とされるものの額は、法第34条第1項第1号《定期同額給与》に規定する定期同額給与に該当するものとする((2)に掲げる期間については、(1)に掲げる事業年度についてこの取扱いを受ける場合に限る。)。

※下線部分が改正部分である。

1  出向先法人が支出する給与負担金に係る役員給与の取扱いに関しては、平成18年度税制改正を踏まえ、法人税基本通達9−2−46の改正により、その取扱いを変更しているが、この改正に関しては一定期間の経過的取扱いを設けている。すなわち、法人が次に掲げる事業年度及び期間において支出した給与負担金の額については、この法令解釈通達による改正後の9−2−46に定める出向先法人の株主総会、社員総会又はこれらに準ずるものの決議がされていない場合であっても、同通達の取扱いによることができることとしている。

(1) 平成18年4月1日から平成19年3月31日までの間に開始する事業年度

(2) (1)に掲げる事業年度のうち最も新しい事業年度終了の日の翌日から同日以後に行われる役員給与の改定までの期間(同日から3月を経過する日(保険会社にあっては、4月を経過する日)までの期間に限る。)

   この取扱いは、出向者の給与負担金については、従来、株主総会等の決議を経るべきものかどうか必ずしも明らかでなかったこと、また、会社法施行後間もなく、企業実務において株主総会等の決議を経ていない場合も多く見受けられること等に鑑み、改正初年度においては、株主総会等の決議を経ていない場合であっても、改正後の法人税基本通達9−2−46の取扱いによることを認めることとしたものである。ただし、改正後の同通達の(2)の要件については満たしておく必要がある点に留意する必要がある。

2  上述の経過措置のほか、改正初年度における激変緩和措置として、法人がこの法令解釈通達による改正後の9−2−46の取扱いを受けず、かつ、上記1の株主総会等の決議がない場合の経過的取扱いの適用を受けない場合であっても、改正前の9−2−34の取扱いにより報酬とされるものの額は、法人税法第34条第1項第1号《定期同額給与》に規定する定期同額給与に該当するものとすることとしている。この経過的取扱いにより、たとえ事前確定届出給与の届出がされていない場合であっても、従来、損金の額に算入されていた出向元法人における月給に相当する部分に係る給与負担金の額は、損金の額に算入されることとなる。

3  なお、連結納税制度においても同様の通達(連基通 経過的取扱い(4))を定めている。

【新設】 (業務主宰役員の意義)

9−2−53 法第35条第1項《特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入》に規定する「法人の業務を主宰している役員」とは、会社の経営に最も中心的に関わっている役員1人をいう。この場合、最も中心的に関わっているかは、事業計画の策定、多額の融資契約の実行、人事権の行使等に際しての意思決定の状況や役員給与の多寡等を総合的に勘案して判定する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  平成18年度税制改正により、特殊支配同族会社が、その法人の業務を主宰している役員(個人に限る。以下「業務主宰役員」という。)に対して支給する給与の額のうち給与所得控除額に相当する部分として計算される金額は、損金の額に算入しないという制度が創設された(法351、法令72、72の2141013)。
 この制度の適用対象となる特殊支配同族会社とは、同族会社の業務主宰役員及びその業務主宰役員と特殊の関係のある者(以下「業務主宰役員関連者」という。)がその同族会社の発行済株式又は出資の総数又は総額の90%以上に相当する数又は金額の株式又は出資を有する場合その他一定の場合に該当するその同族会社(その業務主宰役員及び常務に従事する業務主宰役員関連者の総数が常務に従事する役員の総数の半数を超えるものに限る。)をいうこととされている(法351、法令72)。
 ただし、特殊支配同族会社の基準所得金額が一定の金額以下である事業年度など一定の事業年度については、本制度の適用はないこととされている(法352、法令72の2513)。

2  この「業務主宰役員」とは、法人の業務を主宰している役員一人を指す概念であり、個人に限ることとされている(法351)。
 具体的には、税務上の役員(法2十五、法令7)のうち、会社の経営に最も中心的に関わっている役員をいうこととなり、通常は、代表取締役や社長といわれる役員がこれに該当することになることが多いと考えられ、その判定に困難が伴うといったことはあまり想定できない。
 しかしながら、会社における役員の肩書きや給与の金額と実際の業務の主宰者(オーナー)が誰であるかといった点との関係は、その会社により区々であるとも考えられることから、単に肩書きにより判定するのではなく実質的な関わりにより判定する場面も生じよう。この場合の判定に当たっては、例えば、事業計画の策定、多額の融資契約の実行、人事権の行使等に際しての意思決定の状況や役員給与の多寡などもその判断の要素になると考えられる。
 本通達はこのことを明らかにしている。

3  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−2−52)を定めている。

【新設】 (常務に従事する役員の意義)

9−2−54 法第35条第1項《特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入》に規定する「常務に従事する役員」とは、会社の経営に関する業務を役員として実質的に、日常継続的に遂行している役員をいう。

(注)1  使用人兼務役員のうち、その者に対する役員給与のうち役員としての職務に対する給与がその会社の使用人としての職務に対する給与を超えるような者は「常務に従事する役員」に該当するが、単に取締役会の構成員として業務執行に関する意思決定に参画するだけの者は「常務に従事する役員」に該当しない。

 2  会計参与や監査役は、通常は「常務に従事する役員」に該当しない。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  本制度の適用対象となる特殊支配同族会社は、業務主宰役員及び常務に従事する業務主宰役員関連者の総数が、常務に従事する役員の総数の半数を超える同族会社に限られている(法351)。
 この「常務に従事する役員」とは、会社の経営に関する業務を役員として実質的に、日常継続的に遂行している役員をいい、「常務に従事する役員」に該当するか否かについては、その業務の内容や従事の実態などを踏まえ、その実質に応じて個々に判断することとなる。
 例えば、代表取締役は会社を代表し、会社の業務に関する一切の行為をする権限を有するため、当然に「常務に従事する役員」に該当することになろう。
 また、副社長、専務又は常務などの職制上の地位を有する役員については、その会社の枢要かつ責任のある地位にあり、会社の経営に関する業務を実質的に、日常継続的に遂行している役員と考えられることから、「常務に従事する役員」に該当することとなる。
 使用人兼務役員については、その役員としての職務が、単に取締役会のメンバーとして業務執行に関する意思決定に参画するだけでなく、会社の経営に関する業務を実質的に、日常継続的に遂行している場合には、「常務に従事する役員」に該当することとなる。具体的には、その者に対する役員給与のうち役員としての職務に対する給与がその会社の使用人としての職務に対する給与を超えるようなときには、「常務に従事する役員」に該当するものとして取り扱うこととなる。
 なお、会計参与や監査役については、そもそも会社の経営に関する業務を行う役員ではないことから(会社法3741、3811)、通常は「常務に従事する役員」に該当しない。
 本通達は、このことを明らかにしている。

2  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−2−53)を定めている。

【新設】 (特殊支配同族会社の判定)

9−2−55 法第35条第1項《特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入》に規定する特殊支配同族会社(以下9−2−56において「特殊支配同族会社」という。)に該当するかどうかの判定に当たっては、1−3−1《株式会社における同族会社の判定》から1−3−8《同一の内容の議決権を行使することに同意している者がある場合の同族会社の判定》までの取扱い(1−3−5《同族会社の判定の基礎となる株主等》の取扱いを除く。)を準用する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  特殊支配同族会社に該当するかどうかを議決権の数によって判定するに当たり、個人又は法人との間で当該個人又は法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者がある場合には、その同意している者が有する議決権は当該個人又は法人が有するものとみなし、かつ、当該個人又は法人(その議決権に係る会社の株主等であるものを除く。)はその議決権に係る会社の株主等であるものとみなすこととされている(法令724)。また、業務主宰役員と特殊の関係のある者に該当するかどうかの判定における「同族会社を支配している場合」の判定に当たっても同様に取り扱われる(法令722)。
 この「同一の内容の議決権を行使することに同意している者」かどうかは、契約、合意等により、個人又は法人との間で当該個人又は法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している事実があるかどうかにより判定されるのであるが、例えば、次のような場合は同一の内容の議決権を行使することに同意している事実があるものと考えられる。

1 株式の所有が組合形態で行われている場合で、特定の組合員の意思により議決権が行使される旨の組合契約等における合意があるとき

2 株式の所有が信託形態で行われている場合で、委託者、受託者又は他の受益者の意思又は指図により議決権を行使する旨の合意又は信託行為における定めがあるとき

3 株式を相互に持ち合っている場合で、議決権の行使についてお互いの意に沿うよう行使する旨の合意があるとき

4 当該個人又は法人に対して継続的に白紙委任状を提出しているとき

   なお、単に過去の株主総会等において同一内容の議決権行使を行ってきた事実があることや、当該個人又は法人と出資、人事・雇用関係、資金、技術、取引等において緊密な関係があることのみをもっては、当該個人又は法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者とはならない。
 本通達は、上記の事柄について、同族会社の判定に関する取扱いである法人税基本通達1−3−1《株式会社における同族会社の判定》から1−3−8《同一の内容の議決権を行使することに同意している者がある場合の同族会社の判定》までの取扱い(1−3−5《同族会社の判定の基礎となる株主等》の取扱いを除く。)を準用して、明らかにしている。

2  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−2−54)を定めている。

【新設】 (基準期間に含まれない事業年度等)

9−2−56 特殊支配同族会社の当該事業年度開始の日前三年以内に開始した各事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度。以下9−2−56において同じ。)のうちに、特殊支配同族会社に該当しない事業年度がある場合には、最後非該当事業年度(当該特殊支配同族会社に該当しない事業年度のうち、最も新しい事業年度をいう。)前の各事業年度は、当該各事業年度のうちいずれかの事業年度が特殊支配同族会社に該当するときであっても、令第72条の2第5項《特殊支配同族会社の基準所得金額の計算》に規定する基準期間(以下9−2−57において「基準期間」という。)に含まれない。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  基準所得金額が一定の金額以下である事業年度については、特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度は適用しないこととされている(法352)。
 この基準所得金額の算出の基礎となる基準期間とは、前3年以内に開始した各事業年度等をいうが、特殊支配同族会社に該当しない事業年度等がある場合には、その該当しない事業年度等のうち、最も新しい事業年度等以前の各事業年度等を除くこととされている(法令72の25)。
 そこで、例えば、前3年以内に開始した事業年度のうち、直前の事業年度及び3期前の事業年度は特殊支配同族会社に該当するが、2期前の事業年度は特殊支配同族会社に該当しない法人について、基準期間に含まれる事業年度がどうなるのか、若干分りづらい点がある。
 そこで、本通達において、最後非該当事業年度(当該特殊支配同族会社に該当しない事業年度のうち、最も新しい事業年度をいう。)前の各事業年度は、当該各事業年度のうちいずれかの事業年度が特殊支配同族会社に該当するときであっても、基準期間に含まれないことを留意的に明らかにしている。

2  具体例をあげると、次のとおりとなる。
 ○:特殊支配同族会社に該当
 ×:特殊支配同族会社に非該当

  第1期 第2期 第3期 第4期
(当期)
基準期間
事例1 × なし
事例2 × 第3期
事例3 × × なし
事例4 × 第2期、第3期
事例5 × × なし
事例6 × × 第3期
事例7 × × × なし

3  なお、連結納税制度においても同様の通達(連基通8−2−55)を定めている。

【新設】 (基準期間における期末業務主宰役員等の判定)

9−2−57 基準期間に含まれる各事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、当該連結事業年度。以下9−2−57において同じ。)の中途において業務主宰役員に異動があった場合において、令第72条の2第11項《業務主宰役員給与額の意義》に規定する期末業務主宰役員又は期中業務主宰役員に該当するかどうかは、当該基準期間に含まれる各事業年度の終了の時においてそれぞれ判定する。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  前3年内基準所得金額の算出に当たっては、所得金額に「業務主宰役員給与額」を加算する
こととされている(法令72の25)。
 この業務主宰役員給与額とは、法人税法上、次のとおり規定されている(法令72の211)。
 「この条において『業務主宰役員給与額』とは、特殊支配同族会社の業務主宰役員(業務主宰役員に異動があつた場合には、第1項に規定する期末業務主宰役員又は期中業務主宰役員に該当するものに限る。)の各事業年度の業務主宰役員であった期間において支給される法第35条第1項に規定する給与の額(法第34条(役員給与の損金不算入)の規定により損金の額に算入されない金額を除く。)をいう。」
 また、「期末業務主宰役員」とは、「当該事業年度終了の時における業務主宰役員」をいい、「期中業務主宰役員」とは、「当該事業年度における業務主宰役員のうち当該期末業務主宰役員以外の者(当該期末業務主宰役員に係る前条第1項第1号から第五号までに掲げる者に限る。)」をいうこととされている(法令72の21)。
 これらの規定から、本制度を適用する事業年度(当期)中において、業務主宰役員に異動があった場合には、当期末の現況により期末業務主宰役員又は期中業務主宰役員に該当するかどうかを判定することは明らかなのであるが、基準期間(当期前3年以内に開始した各事業年度等)において業務主宰役員に異動があった場合に、期末業務主宰役員又は期中業務主宰役員に該当するかどうかの判定をいつの時点の現況により行うのかという点については、若干疑問が生じるところである。
 そこで、本通達において、基準期間中に含まれる各事業年度等の中途において業務主宰役員に異動があった場合には、当該基準期間に含まれる各事業年度の終了の時における現況により、期末業務主宰役員又は期中業務主宰役員に該当するかどうかを判定することを明らかにしている。

2  なお、連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−2−56)を定めている。

【新設】 (役務の提供の対価として発行される新株予約権)

9−2−59 法第54条第1項《新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等》に規定する「当該役務の提供の対価として当該個人に生ずる債権を当該新株予約権と引換えにする払込みに代えて相殺すべきもの」に該当するかどうかは、例えば、次の(1)及び(2)に掲げる事実があるかどうかにより判定することに留意する。

(1) 当該新株予約権の発行に係る決議において、当該新株予約権の払込金額の払込みに代えて、当該新株予約権を発行する法人に対する役務の提供に係る債権をもって相殺することとされていること。

(2) 法人が、当該新株予約権を対価とする役務の提供につき、その提供に応じてその確定した決算において費用として経理していること。

※下線部分が改正部分である。

【解説】

1  本通達は、法人税法第54条《新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等》の対象となる新株予約権が、役務の提供の対価として発行されたものであるかどうかの判断基準を示している。

2  平成18年度税制改正により、新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等の制度が創設された。この制度は、法人が個人から役務の提供を受ける場合において、その役務の提供に係る費用の額につきその対価として新株予約権を発行したときは、その個人においてその役務の提供につき給与等課税事由(所得税法その他所得税に関する法令の規定によりその個人の給与所得その他の一定の所得の金額に係る収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額を生ずべき事由をいう。)が生じた日においてその役務の提供を受けたものとして、法人税法の規定を適用するというものである(法541、法令111の2)。
 本制度の適用対象となる新株予約権とは、役務の提供の対価として個人に生ずる債権をその新株予約権と引換えにする払込みに代えて相殺すべきもので、所得税法施行令第84条に規定する権利の譲渡についての制限その他特別の条件が付されている権利に該当するものをいうこととされている(法541、法令111の22)。すなわち、新株予約権が役務の提供の対価として発行されたものでない場合には、本制度の適用対象外となることから、新株予約権が役務提供の対価として発行されたものかどうかが問題となる。
 そこで、本通達においては、新株予約権が役務提供の対価として発行されたものかどうかの判定要素として、1新株予約権の発行決議の内容及び2確定した決算における費用計上の2つを例示している。

3  会社法では、「新株予約権者は、株式会社の承諾を得て、同項の規定による払込みに代えて、払込金額に相当する金銭以外の財産を給付し、又は当該株式会社に対する債権をもって相殺することができる」とされ(会社法2462)、新株予約権について報酬債権をもってする相殺による有償発行ができることとされている。したがって、新株予約権の発行に係る決議において、当該新株予約権の払込金額の払込みに代えて、当該新株予約権を発行する法人に対する役務の提供に係る債権をもって相殺することとされている場合には、一義的には役務の提供の対価であることの判定要素の一つになると考えられる。
 ただし、新株予約権が、そのような会社法上の決議により付与されたものであっても、例えば、法人が会計上、費用として計上していないようなものについては、一般的には、役務の提供の対価とは認められないと考えられる。企業会計においても、「ストックオプションを付与し、これに応じて企業が従業員等から取得するサービスはその取得に応じて費用として計上し、対応する金額を、ストックオプションの権利の行使又は失効が確定するまでの間、貸借対照表の純資産の部に新株予約権として計上する」こととされているところである(平成17年12月27日企業会計基準委員会企業会計基準第8号「ストックオプション等に関する会計基準」の「権利確定日以前の会計処理4」)。
 したがって、新株予約権が、役務の提供に係る債権をもって払込みに代えて相殺する旨の会社法上の決議により付与され、かつ、法人がその確定した決算において費用として経理している場合には、当該新株予約権は役務提供の対価として付与されたものと認められる。本通達において、このことを明らかにしている。

4  なお、いわゆるストック・オプションについて、旧商法においては、無償の新株予約権の発行と整理されていたところであり、仮に本通達の(1)に該当しない無償発行の決議により使用人等に新株予約権が付与された場合であっても、その実態が役務の提供の対価としての付与であり、何らかの合理的な理由で無償付与の決議によらざるを得なかったものと認められるときには、損金の額に算入すべき余地があるものと考えられる。

5  連結納税制度においても、同様の通達(連基通8−2−58)を定めている。




            



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