機能系新ジャンル、サッポロ『極ZERO』ヒットの理由

@DIME 1月10日(金)9時15分配信

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機能系新ジャンル、サッポロ『極ZERO』ヒットの理由

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機能系新ジャンル、サッポロ『極ZERO』ヒットの理由
『サッポロ 極ZERO』は、世界ではじめて、プリン体0.00を実現し、さらに糖質もゼロにした機能系新ジャンル。

 2013年6月に発売された『サッポロ 極ZERO』は、世界ではじめて、プリン体0.00を実現し、さらに糖質もゼロにした機能系新ジャンル。売れ行きは発売開始時から好調で、当初220万ケース(1ケース:大びん633ml×20本)だった2013年の販売目標を、発売から約1カ月後の7月下旬には300万ケースに上方修正したほど。12月上旬に300万ケースを突破し、2013年末には350〜360万ケースに達する見込みだ。なお、300万ケースを350ml缶に換算すると、約1億1000万本にのぼる。

 サッポロビールでは10年ほど前から、ビール系飲料のプリン体をゼロにする研究が始まっていたが、『サッポロ 極ZERO』が企画され開発が始まったのは、4年ほど前になる。企画・開発の経緯には、サッポロビールの視点から見たものと、消費者の視点から見たものの2つが存在するという。

 まず、サッポロビールの視点とは、機能系の分野で目立った商品が育成できていないことだった。家庭用の主戦場である新ジャンル、その中でもカロリーオフや糖質オフの機能系の伸びが目覚ましい中、『サッポロ 極ZERO』発売前のサッポロビールの機能系新ジャンルのシェアは2%ほど。苦戦の原因は、味覚を優先させた結果、機能が後回しになっていたためだった。『サッポロ 極ZERO』のブランド担当を務める営業本部ブランド戦略部サッポロブランドグループ マネージャーの小林隆太氏は、次のように振り返る。

「カロリー○○%オフ、糖質○○%オフと機能が中途半端。おいしさを担保するためには、そうせざるを得ませんでした」

■状況を打開した発想の転換

 この状況を打開するために浮上してきたのが、消費者の視点だった。

「お客様へのアンケート結果によれば、ビール類から減らしたい成分として約9割の方が、カロリー、糖質、プリン体を挙げていました。これら3つは、少なければ少ないほどいい、というのです」と小林氏。

 アルコールを含む以上、カロリーはゼロにできない。糖質ゼロは、すでに他社が実現している。しかし、プリン体ゼロはどこも実現していなかった。

 勝機はプリン体ゼロの実現に。こうしてサッポロビールは、プリン体ゼロの機能系新ジャンルの開発を決意。合わせて、糖質もゼロにし、健康志向の強い消費者に強く訴えることで機能系新ジャンルでのシェア拡大を目指すことにした。

 それまでプリン体ゼロを実現できなかったのは、おいしさを担保することが難しかったからである。プリン体は旨味の素。ゼロにするということは、おいしさを完全に損なってしまうということでもあった。

 開発は当初、一度つくったビール類からプリン体を取り除く形で検討されたが、これでは旨味成分も抜けてしまい、おいしさが担保できない。できたものから取り除く、「引き算」の発想では実現できないことから、開発は自然と行き詰まり、開発スタッフを悩ませた。

 この状況を変えたのは、発想の転換だった。プリン体を取り除くのではなく、水溶性食物繊維や香料といったプリン体フリー原料を使ってベースをつくり、そこに苦味料やカラメル色素などを付与しビールらしく仕上げることを着想したのである。いわば「足し算」の発想でつくっていくことにしたのである。

■ビールを飲めない人にも届いたメッセージ

 こうして製法のメドがつき、製品化に前進したかに見えた。だが、それからさらに、味づくりで試行錯誤を繰り返すことになる。つくった試作品は100を超え、ときには「ビールとは思えない」「薄っぺらい」といった厳しい評価を社外モニターからもらい落ち込んだことも。また、香料を使い慣れていなかったことから、サプライヤーと相談し、ビール類に合う最適な香料を開発してもらったほどだった。

 サプライヤーも巻き込み総力を挙げて開発した『サッポロ 極ZERO』は、爽快な旨味とスッキリとした後味を持ったものに仕上がる。ターゲットにしたのは、30歳代から60歳代の男性。販売促進ではターゲット層に確実に知ってもらうことに注力した。テレビと新聞に絞り込んで最大限露出させるようにしたほか、新たな試みとして調剤薬局でリーフレットを配布してもらうようにした。ターゲットを絞り込んだ販促は奏功し、ユーザーの6割が男性とのこと。ユーザーの6割が女性という通常の機能系新ジャンルとは大きく異なる。

 男性に強く訴求できた最大の要因は、テレビCMにある。CMキャラクターのキャスティングがこれ以上ないからだ。CMキャラクターには女優・モデルの桐谷美玲さんと、さまぁ〜ずの三村マサカズさんの2人が起用されているが、肝は三村さん。実は三村さんはターゲットとする世代であるだけではなく、痛風持ちでもある。プリン体の摂取を控えなければならないはず三村さんが、おいしそうに『サッポロ 極ZERO』を飲むシーンは、痛風や高尿酸血症でビールを控えざるを得ない人に驚きと希望をもたらした。

「当社のお客様センターに、痛風や高尿酸血症で医者からビール類をとめられていた人から、『久しぶりに晩酌できます。ありがとうございます』といったありがたい便りを多く頂戴しています」と小林氏は明かす。

★取材からわかった『サッポロ 極ZERO』のヒットの要因★

1.オンリーワン

 世界初のプリン体ゼロを実現し、なおかつ糖質もゼロにした。2つのゼロを両立したビール類は、今のところこれしかない。2つのゼロがもたらす価値が、健康志向が高い昨今の時流にマッチし支持を集めた。

2.ターゲットへの強い訴求

 30歳代から60歳代の男性をターゲットにした販促を展開。とくにテレビCMは、説得力の高いものになり、ターゲットとした客層に確実かつ強力に訴求できた。

3.喜びの提供

 ビールが好きでも、通風や高尿酸血症を患っていれば我慢せざるを得ない。好きなことが止められるのは精神的苦痛以外の何物でもないが、『サッポロ 極ZERO』であれば、病気を気にすることなく飲酒ができる。精神的苦痛からの解放の先には、喜びが待っている。喜びをもたらす商品が支持を集めないはずがない。

 しかし、やがて競合他社からプリン体ゼロの機能系新ジャンルが発売されることが十分に予想され、今後も安泰とはいえない。ユーザーの支持を強固にしておきたいサッポロビールは、リニューアルを実施し2月下旬から順次投入。新原料の採用などでビールらしさを強調し、おいしさを高めることで支持を固めたい考えだ。

「将来は機能系新ジャンルで業界トップを目指す」と意気込みを語る小林氏。『サッポロ 極ZERO』はそのための足掛かりとして、順調なスタートを切った。


文/大沢裕司

DIME編集部

最終更新:1月10日(金)9時15分


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