子会社支援(整理・再建)通達(1)
寄付金の損金不算入 法人税法37条
・平成10年6月、子会社支援に関する通達改正があった。不良債権処理に立ちはだかる「寄付金課税」の関門を明確にし、金融機関の迅速な処理を促す趣旨である。
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1.グル−プ内の子会社等の「欠損金を補填」のための通常の寄附
・寄附した親会社は、別表4において「寄附金の損金不算入」となり、子会社においては、「受贈益」として会計上は欠損金を消すことができるが、別表4で「受贈益の益金不算入」処理をすることとなる。
・会計上の処理では、親会社からの寄附金により子会社の欠損金を消去できるが、税法上は、それぞれ「損金不算入」と「益金不算入」の処理が生ずることとなる。
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2.子会社等を「整理する場合」の損失負担等
・法人がその子会社等の解散、経営権の譲渡等に伴い当該子会社等のために債務の引き受け、その他の損失負担又は債権放棄等(以下、「損失負担等」という)をした場合において、その損失負担等をしなければ、「今後より大きな損失を蒙ることが社会通念上明らか」であると認められるため、やむを得ずその損失負担等をするに至った等、そのことについて相当な理由があると認められるときは、その損失負担等により供与する経済的利益の額は、寄付金の額に該当しない。
(注)「子会社等」には、当該法人と資本関係を有する者のほか、取引関係、人的関係、資金関係等において事業関連性を有する者が含まれる。
サンプル
・経営不振の子会社があり、やむを得ずこれを解散させることにした場合、これに伴う子会社の従業員の処遇の問題。
・子会社は、退職金を支給しようにもそれだけの資金がなければ、親会社が子会社の従業員の退職金を支給せざるを得ない。
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* * * 債務超過の子会社の特別清算 * * *
・債務超過の子会社を特別清算の手続きにより整理する場合においては、「親会社が他の債権者に対する債務の肩代わり等」をした後に、親会社と子会社が個別和解して清算手続きを終了するという方法がとられることが多い。
・法人税基本通達9−4−1は、寄附金以外の損失として「整理損失」ともいわれている。
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* * * 「債権放棄等」の「等」 * * *
・債権放棄等の「等」には、「資金贈与」、「経費助成」、「不良債権の買取り」による経済的利益の供与の方法も含まれる。
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3.子会社等を「再建する場合」の無利息貸付け等
・法人がその子会社等に対して金銭の無償若しくは通常の利率よりも低い利率での貸付け又は債権放棄等(以下9−4−2において「無利息貸付け等」という。)をした場合において、その無利息貸付け等が例えば業績不振の「子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもの」で合理的な再建計画に基づくものである等その無利息貸付け等をしたことについて相当な理由があると認められるときは、その無利息貸付け等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする。・(注)「合理的な再建計画」かどうかについては、支援額の合理性、支援者による再建管理の有無、支援者の範囲の相当性及び支援割合の合理性等について、個々の事例に応じ、総合的に判断する。
サンプル
・利害の対立する複数の支援者の合意により策定されたものと認められる再建計画は、原則として、合理的なものと取り扱う。
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通達改正における3つのポイント
@合理的な再建計画に基づく利益供与の手段として無利息・低利融資の他に「債権放棄等も含まれる」ことを明らかにする。
A整理又は再建の対象となる子会社等には、子会社のほか、「取引先、役員を派遣している会社及び資金を貸し付けている会社等が含まれている」ことを明らかにする。
B「合理的な再建計画」かどうかについては、支援額の合理性、再建管理の有無、支援者の範囲の相当性及び支援割合の合理性等をみて個々の事案に応じて総合的に判断するが、例えば、利害の対立する複数の支援者の合意により策定されたと認められる再建計画は、原則として合理的なものとして取り扱うことを明らかにする。
整理・再建支援のチェック項目
* * 整理・再建支援のチェツク項目* *
検 討 項 目 及び そ の 内 容 |
整 理 の 場 合 |
再 建 の 場 合 |
(1)事業関連性のある「子会社等」であるか |
資本関係、取引関係、人的関係、資金関係等の事業関連性を有するか |
yes  |
(2)子会社は経営危機に陥っているか |
イ.整理損失は生じるか(実質債務超過か)
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イ.
債務超過等倒産の危機に瀕しているか
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ロ.支援がなければ整理できないか
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ロ.
支援がなければ自力再建は不可能か
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yes  |
(3).支援者にとって損失負担等を行う相当な理由はあるか |
整理又は再建することにより将来のより大きな損失の負担を回避等ができるか |
yes  |
(1).損失負担額(支援額)の合理性(要支援額は的確に算定されているか) |
イ.損失負担額(支援額)は、整理又は再建するための必要最低限の金額となっているか |
ロ.自己努力はなされているか |
yes  |
(2).再建管理等の有無 |
計画の管理は行われるか(長期の場合) |
整理再建管理は行われるか
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yes  |
(3).支援者の範囲の相当性 |
イ.支援者の範囲は相当か |
ロ.支援者以外の事業関連性を有する者が損失負担をしていない場合、合理的な理由があるか |
yes  |
(4).負担割合の合理性 |
事業関連性からみて負担割合は合理的に決定されているか |
いずれにも該当する場合
yes  |
寄附金に該当しない