【自家消費の所得税と消費税-50%?70%?】

以前に棚卸資産を家事(プライベート)のために消費した際には、みなし譲渡といって、消費税がかかるというのを解説致しました(リンクはコチラ)。今回は、棚卸資産をプライベートで消費した場合に所得税法上どのような対応が必要なのかを解説したいと思います。また、廃業時・法人成り時の注意点についても解説していきます。

自家消費とは

まずは根拠条文から確認します。所得税法39条です。

第三十九条  居住者がたな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)を家事のために消費した場合(中略)には、その消費したにおけるこれらの資産の額に相当する金額は、その者のその消費した日の属する年分の事業所得の金額(中略)の計算上、総収入金額に算入する。

つまり、家事のために棚卸資産(商品と思って頂ければOKです)を消費した場合には、その棚卸資産の時価を収入(売上)として計上しなければいけないということになります。この時価については、通常の販売価額とされています(所得税基本通達39−1)。しかし、これには例外(通達39−2)があり、仕入金額以上であり、かつ、販売価額の70%以上を収入に計上されていればそれで認められることになります。

いくらで計上するか50%?70%?

ここで一点疑問が生じると思います。消費税のみなし譲渡では、通常の販売価額の50%以上を計上していればOKでした。所得税では70%以上なので、消費税も併せて70%で計上しなければいけないのでしょうか。こちらに関しては、違う法律ですので別々の%で計上して構いません。所得税の申告書上は通常の販売価額の70%以上で自家消費分を収入として計上し、消費税の申告書上は販売価額の50%以上で計上していれば通達に従った処理となります。

サービスは自家消費になるか

棚卸資産を自家消費した場合に収入計上する必要があることはご理解いただけかと思います。ではサービス(役務提供)を自家消費した場合はどうでしょうか。例えば、美容師さんが家族の散髪をしたような場合です。こちらについては、自家消費として計上する必要はありません。条文上、「棚卸資産を家事のために消費した場合」とありますのでサービス(役務提供)は対象外となります。ただし、役務提供であったとしても、材料等を消費する場合には、その材料代等は対象となるので注意しましょう。

廃業時・法人成り時の注意点

廃業時に、棚卸資産を家事用とする場合には、自家消費として収入に計上することになります。忘れがちなところなので気をつけましょう。また、法人を設立し、業務を引き継がせる場合(法人成り)にも、法人に対してタダで渡すことはできません。仕入金額以上、かつ、販売価額の70%以上を収入に計上する必要があります。なお、棚卸資産(およびそれに準ずる資産)以外の事業用固定資産は、事業所得ではなく、譲渡所得となりますのでご注意下さい。特に会社を設立して固定資産を会社に引き継がせる場合も譲渡所得となりますのでご注意下さい。

いかがだったでしょうか。消費税だけでなく所得税に関しても、廃業時や法人成り時に思わぬ税負担が生じることがありますので、実行される前に税理士にご相談されることをおすすめします

  


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