□■ ■□ 限定承認の場合の税務 □■ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●限定承認とは、相続にあたり、承継した財産の金額を限度として、債務を引継ぐ方法でしたね。
財産よりも多い債務は、相続しない、ということです。
今回は、その限定承認をした場合、税務上どのように取り扱わ
れるのかのお話を、させていただきたいと思います。
●限定承認といえども、相続であることには変わりありませんの
で、「相続人」に対して「相続税」が、課税されることとなり
ます。 しかし、相続税額の計算では、財産の金額から債務の金額を差
し引いて計算しますので、限定承認の場合は、結果的に相続税
は課税されない場合がほとんどです。
普通に考えれば、相続に関するお話ですので、これで終わりです
が、安心してはいけません。 本当に怖いのは、これからです。
●実は、限定承認をした場合には、「被相続人」(亡くなった方)
に対して、「譲渡所得税」が課税されてしまうのです。
なぜ、課税されてしまうのでしょうか?
限定承認をした場合、相続人はその相続した財産を売却して、
その売却金額を、債務の返済に充てることが、考えられます。
この場合、通常であれば「相続人」に対して「譲渡所得税」が課
税されます。 これならば話は分かりますね。
●しかし、よく考えてみて下さい。この売却代金は全額債務の返済
に充てられます。 したがって、相続人の手元にはお金が残らず、なんら利益を受け
ていないこととなります。 このような状態で、「相続人」に対して「譲渡所得税」を課税し
てしまうのは、かなり酷な話です。
●そこで相続時に、「被相続人」から譲渡があったことにすること
により、「相続人」はその財産を時価で取得したことになります。
したがって、「相続人」がその財産をすぐに売ったとしても、
ほとんど売却益はないでしょうから、「譲渡所得税」はかからな
い、ということになります。 いわば、「相続人」救済のための制度、とも言えるわけです。
●では、「被相続人」にかかる「譲渡所得税」は、既に「被相続人」
はいないわけですから、「相続人」が払わなければいけないので
しょうか? 基本的には、そのとおりです。
「被相続人」に対する「譲渡所得税」は、死亡から4カ月以内に
「相続人」が、準確定申告をして、納付する必要があります。
●しかし、この「譲渡所得税」も「被相続人」の債務であることに
は、変わりありません。 「相続人」は、限定承認をしていますので、他の債務とあわせて
相続財産の範囲までしか、納付する必要はないのです。
結果として、「被相続人」に対する「譲渡所得税」は、納付する
必要がない、という可能性が高いのです。
ただし、上記のような課税があるということで、限定承認をした
場合には、「譲渡所得税」の準確定申告が必要である、というこ
とを、覚えておいてください。
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