Q 相続対策を行ってもらっていたところ、自宅の物置場として使用していた土地が、まったく知らない人の土地であることがわかりました。弁護士の先生に相談したところ、裁判所に時効取得の援用に係る訴訟というものを起こして、時効取得が成立しました。この場合、税金面では何かする必要があるのでしょうか?
A 取得時効とは、他人の財産を、一定期間所有の意思をもって、平然かつ公然に他人の物を占有することによって、所有権を時効により取得できるというものです。
取得時効が完成しただけでは、他人の資産の所有権を取得することはできず、裁判所等に時効を援用をした場合に、晴れて所有権を取得することができます。
今回、土地を時効の援用により取得した場合には、その時効により取得された土地の財産の価額(時価)が経済的利益となり、その時効により取得した日の属する年分(時効を援用したとき)の一時所得として、所得税の課税の対象となります。
ポイントは、「取得の時期」と「収入金額」となります。
たとえば、平成27年1月に時効取得の援用をし、平成28年7月に時効取得が成立した場合は、どうなるでしょうか?
取得の時期はあくまで、時効を援用した時になりますので、平成27年1月になります。したがって、平成27年度の確定申告にて、一時所得の申告をしなければなりません。
では、収入金額はどうなるのでしょうか?
結論から言うと、時効を援用した時における、その土地の「時価」になります。上記の例でいうと、平成27年1月時点のその土地の「時価」です。
なお、「時価」については、原則として財産評価基本通達により算出した金額、つまり相続税評価額でよいとされています。
具体的な計算方法は、平成27年1月時点のその土地の状況について、
・「時価」1,000万円
・時効援用などに伴う経費が100万であった場合
(1,000万円-100万円-50万円)×1/2=425万円
が、一時所得の金額となります。
さらに、この時効取得した土地を、平成29年2月に売却した場合の譲渡所 得の計算はどうなるでしょうか?引き続き、上記の例でみていきましょう。
所有期間は、平成27年1月~平成29年2月(平成29年1月1日時点で判定) に基づいて計算しますので、5年以下で短期譲渡所得となります。譲渡対価より控除される時効取得した土地の取得費の額は、平成27年1月 時点の時価、つまり1,000万円ということになります。
概算取得費(譲渡対価×5%)が取得費の額とはなりませんので、ご注意ください。
なお、売却価額が2,000万円、譲渡費用が100万円だった場合の短期 譲渡所得の金額は、次のようになります。
(2,000万円-1,000万円-100万円)=900万円
短期譲渡所得ですので、これに39%の税率(所得税30%、住民税9%) が、かかってくることになります。
時効完成利益
一時所得の申告をせず課税が時効になった場合の取得費はどうなるかの問題
この場合も
譲渡対価より控除される時効取得した土地の取得費の額は、平成27年1月時点の時価、つまり1,000万円ということになります。
概算取得費(譲渡対価×5%)が取得費の額となったら
1,000万円
にも課税されてしまうことになる。
法人税で会社の保険積立金を忘れた場合もこんな感じかな。
ダブルクリック
-