不動産の消費税還付による節税は現在でも可能か?
平成22年度税制改正そこでこのようなスキームを阻止するため、下記の期間中に調整対象固定資産を取得した場合には、取得後3年目までは強制的に「原則課税事業者」になることとされました(いわゆる『3年縛り』)。
このようなケースでは、3年目までに「免税事業者」や「簡易課税事業者」になることができないため、『3年目の調整計算』から逃れられないことになったわけですが…。 従来の消費税還付スキームと税制改正②・高額特定資産とは?平成22年度改正の抜け穴22年度改正によりそれまでの消費税還付スキームは封じられたように見えましたが、今思えば抜け穴だらけでした。 たとえば、
などは『3年縛り』を受けることなく、取得した年の翌年から「免税事業者」や「簡易課税事業者」になることが可能だったわけです。 平成28年度税制改正そこで国税側は、「原則課税事業者」の期間中に『高額特定資産』を取得したときは、いかなる場合でも取得後3年間は「免税事業者」や「簡易課税事業者」になることができないこととしました(『3年縛り』の強制)。 この結果、居住用アパートの取得に伴い消費税還付を行ったとしても、アパート収入はほとんどが「非課税売上」のため3年間の「通算課税売上割合」が著しく減少することから、『3年目の調整計算』により還付消費税の大半を国に返納せざるを得なくなりました。 高額特定資産とは?『高額特定資産』とは、次のような資産のことをいいます。
『高額特定資産』と『調整対象固定資産』は混同しやすいところですが、ポイントは、
という点です。 今後の消費税還付のポイント28年度改正により消費税還付の難易度は一気に上昇しましたが、それでも「やり方」次第ではまだまだ可能なケースもあります。 事業用物件の場合テナントビルなどの事業用物件の場合には、これまでどおり消費税を還付できる可能性が高いです。 これは、事業用物件の場合、
ためです。 ただし、『3年縛り』によりすぐに「免税事業者」や「簡易課税事業者」になることができないことから、還付年の翌年・翌々年の納税額は従来よりも増加するためトータルの手残りは従来よりも若干減少する結果となります。 居住用物件の場合アパートなどの居住用物件の場合には、還付申告時に「比例配分法」を使用しますので、必ず『3年目の調整計算』の対象となります。 したがって、通算課税売上割合が著しく減少して還付消費税の大半を返納する羽目にならないよう、「いかに課税売上割合を3年間高くキープできるか」が重要となります。 まとめ度重なる税制改正により、居住用物件での消費税還付のポイントは 「いかにして3年縛りから逃れるか」 → 「いかにして課税売上割合をキープするか」 に変化しました。 消費税還付については税務署の目も年々厳しくなっており、「不正還付」による摘発事例も後を絶ちませんので、実行する際には専門家のアドバイスを受け、くれぐれも慎重に行う必要があります。 2020年令和2年税制改正大綱】P84 (1)居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度等の適正化 1.居住用賃貸建物の取得に係る消費税の仕入税額控除制度について、次の見直しを行う。 イ 住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって高額特定資産に該当するもの(以下「居住用賃貸建物」という。)の課税仕入れについては、仕入税額控除制度の適用を認めないこととする。 ただし、居住用賃貸建物のうち、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分については、引き続き仕入税額控除制度の対象とする。 ロ 上記イにより仕入税額控除制度の適用を認めないこととされた居住用賃貸建物について、その仕入れの日から同日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間の末日までの間に住宅の貸付け以外の貸付けの用に供した場合又は譲渡した場合には、それまでの居住用賃貸建物の貸付け及び譲渡の対価の額を基礎として計算した額を当該課税期間又は譲渡した日の属する課税期間の仕入控除税額に加算して調整する。 2.住宅の貸付けに係る契約において貸付けに係る用途が明らかにされていない場合であっても、当該貸付けの用に供する建物の状況等から人の居住の用に供することが明らかな貸付けについては、消費税を非課税とする。 (注)上記1の改正は令和2年10月1日以後に居住用賃貸建物の仕入れを行った場合について、上記2の改正は同年4月1日以後に行われる貸付けについて、それぞれ適用する。 ただし、上記1の改正は、同年3月31日までに締結した契約に基づき同年10月1日以後に居住用賃貸建物の仕入れを行った場合には、適用しない。 |